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女心
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をんなごゝろ
内端な
女心の
泣くにも
泣かれず
凍つてしまつた
檐の
雫は、
日光を
宿したまゝに
小さな
氷柱となつて、
暖かな
言葉さへかけられたら
今にもこぼれ
落ちさうに、
筧の
中を
凝視めてゐる。
此時こんな
塲合にはかなき
女心の
引入られて、一
生消えぬかなしき
影を
胸にきざむ
人もあり、
岩木のやうなるお
縫なれば
何と
思ひしかは
知らねども、
涙ほろ/\こぼれて一ト
言もなし。
『あら、
父君は
單獨で
何處へいらつしやつたの、もうお
皈りにはならないのですか。』と
母君の
纎手に
依りすがると
春枝夫人は
凛々しとはいひ、
女心のそゞろに
哀を
催して、
愁然と
見送る
良人の
行方
源七が
家へは
遣らぬが
能い、
返禮が
氣の
毒なとて、
心切かは
知らねど十
軒長屋の一
軒は
除け
物、
男は
外出がちなればいさゝか
心に
懸るまじけれど
女心には
遣る
瀬のなきほど
切なく
悲しく