夫婦ふたり)” の例文
「良人の養家、伊賀の小馬田こまたの領主、服部信清どののご家来などが、わたくしたち夫婦ふたりのものを、八方さがしていたのでございました」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは私に代表させた私一家へ対しての、夫婦ふたりの感謝だったのかも知れない。子供だけれど潔癖だからと、白い御飯を光るようにいてだした。
わきへ引込んだ、あの、辻堂の小さく見える処まで、昨日、ひるごろ夫婦ふたり歩行あるいた、——かえってそこに、欣七郎の中折帽が眺められるようである。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其処は死んだ細君と知合になった当時、く両人が散歩した所だそうで、しかも死んだのは、彼のみならず、夫婦ふたりの間に出来た、たった一人の子供も殺して死んだ。
夫婦ふたり会話やりとりをぼんやり聞いている小信は、まるで薄桃色の霞のなかに生きているような気がするだけで。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
玉木さんは食客らしく遠慮勝ちに膝をすすめて、夫婦ふたりして並んで食台の周囲まわりに坐った。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
根っから夫婦ふたり一緒に出歩いたことのない水臭い仲で、お互いよくよく毛嫌いして、それでもたまに大将が御寮人さんに肩を揉ませると、御寮人さんは大将のうしろで拳骨を振り舞わし
大阪発見 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
よくしたもので二階のすぐ上り口の鼻先に知った人間が夫婦ふたりで買い物をしている。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「ここだけは、いつまでも、平和な山里でありますように。そして、よい嬰児ややが生れたら、お夫婦ふたりして河内へ見せに来てください」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一寸見ちょっとみには、かの令嬢にして、その父ぞとは思われぬ。令夫人おくがた許嫁いいなずけで、お妙は先生がいまだ金鈕きんぼたんであった頃の若木の花。夫婦ふたりの色香を分けたのである、とも云うが……
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夫婦ふたりは私のおぜんの前にいて、あおいでくれながらいった。
生んだばかりの愛しい——あれほど夫婦ふたりたまいつくしんでいたものを、眼をとじて、母の手で刺し、自分もその刃で、自害していた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「申せば、長くなりますが、覚えもない嫌疑をかけられ、行く先々で、六波羅の放免(密偵)に、つきまとわれている因果者の夫婦ふたりなので」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きょうの清洲の町は、自分たち夫婦ふたりに眼をあつめている気がした。寧子のうるわしい姿に振り向く往来人に、若い良人はむしろ好意を持った。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫婦ふたりして長谷はせへお礼詣りに行って参籠さんろうしたせつ、いただいて来た命名とやら。何ぞ長谷へがんを結んでいたことがあったのかもしれませぬ」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや夫婦ふたりにとれば、ただよろこびにもしておれまい。ひとのそしり、うしろ指、さらには前途、芸道の修行も長くけわしかろう。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おらあおし大蔵だいぞうの弟分、大蔵が消えたあと、放免頭となったおし権三ごんざだ。おめえたち夫婦ふたりの面あ、藤井寺のとき、この眼の奥におさめてある。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「すぐ、夫婦ふたりに旅装いを急がすがいい。……そのうえで、わしの待つ一間へ連れて来てくれい。長い別れになろうも知れぬ」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なにかもっとお夫婦ふたりだけの深い話もあるにちがいない。と察して、爺の左近は、そこらの者へ眼くばせした。そして、そっと一同でほかへ去った。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、べつだんな用事でもござりませぬ。お夫婦ふたりとも、ご息災とさえ伺えば、それで祝着しゅうちゃく。ただよろしくおつたえを」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玄徳の父母祖先の墳墓つかは、すべて涿郡たくぐんにあるので、母公は、婿の孝心をよみし、それに従うのはまた、妻の道であると、機嫌よく夫婦ふたりを出してやった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「法師は、右馬介うまのすけどのではありませんか。また、夫婦ふたりのお方も、たしかどこかで、お見うけしたような? ……」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
庭へまわって来て、角三郎の部屋の縁に腰をやすめ、夫婦ふたりになって生活くらす日の陽ざしをうっとりと思ってみる。
御鷹 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「むむ、そこでさて、夫婦ふたりの仲の柿の子は、まだ渋柿やら甘柿やらも分らんなあ。たのむぞ、親根はそなただ」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、趣味にも、朝夕の起臥おきふしにも、夫婦ふたりの仲のよさは、家来の目にも、うらやましく見えるほどであった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いま、そちたち夫婦ふたりに、武門の外へ返れというのも、むなしく生きろというのではない。そちたちには二度とえられぬ命を大事につかってゆく別な道があったはずだ
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
封は卯木うつぎと元成の夫婦ふたり名前になっているが、筆つきからみて、良人の元成がしたためたものらしい。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちまたでは名を雨露次うろじとかえ、卯木もその遊芸人の妻だった。だが、浮草のような生活たつきの中にも、夫婦ふたりだけの生きがいを、また愉しみを、見つけかけていたのではなかったか。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わかりました」若い夫婦ふたりは、しみじみと、範宴のことばを心にみ入れてうなずいた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれからすぐ夫婦ふたりして大坂を立ち、道中の路銀とてないので飴売あめうりの胴乱どうらんをかけて、子の乳となる妻のかてを、一銭二銭と働きながら、きょうやっと、小倉まで辿たどり着いたところだった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫婦ふたりが仲の初の児。いわばおぬしと俺との、これは初陣ういじんの賜物」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫婦ふたりしてすすめるのを謝して、武松は深更に帰って行ったが、あくる朝、眼をさましてから、ゆうべ酒の上で兄夫婦と約束して帰ったことを思い出し、さっそく県役署の知事室へ行き、知事に会って
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌日も、若い夫婦ふたりは、きのうのようにくるまで吉水の門へ通ってくる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫婦ふたりにとれば、懐かしい思いでの品でもある——。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「私たち夫婦ふたりには生涯の門出となった一夜でした」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はれがましそうに、夫婦ふたりは子に代ってそう言った。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お。お夫婦ふたりも」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)