)” の例文
その外廓がいかくは、こう軍艦の形にして、船の側の穴の処に眼鏡をめたので、容堂公のを模して足らないのを駒形の眼鏡屋がりました。
暫くすると、激しい靴音がして独逸兵がを跳ね飛ばすやうな勢で入つて来た。農夫ひやくしやうは両手の掌面てのひらめてゐた顔を怠儀さうにあげた。
金歯をめているのが見え、いつも酸漿ほおずきを口に含んでいた。売り声にも年季が入っていて、新米には真似られない渋さがあった。
生い立ちの記 (新字新仮名) / 小山清(著)
医者が来て、その穴へU字形の針金をめると、そんなひどいことをしてどうすると叫びながら、病人は子供のように泣いた……
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
予は場内を一巡しただけで殆んどがっかりした、頭が疲れて、砂一斗もめられたような気持である。
而も日が經つて行く内に、「猫又」の一語が表象するシニックな感じが、先生の人柄にぴつたりまるばかりでなく、それが巧に先生を諷し得てゐるやうな氣持がして來た。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
さてどうも娑婆しゃばのことはそう一から十まで註文ちゅうもん通りにはまらぬもので、この二三箇月前から主はブラブラわずらいついて、最初は医者も流行感冒はやりかぜの重いくらいに見立てていたのが
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
われに益する云々てう句にめ込んでいってみても、さほど不体裁な言葉にならぬ。
音讀して美しい字面をめて日光山となつたのは、たとへば赤倉温泉のなかたけ名香なかたけの字で填められ、名香みやうかうを音讀して妙高山となり、今日こんにちでは妙高山で通るやうになつたと同じである。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
人通りのない時、よしんば出来心にしろ、石でもほうり込まれ、怪我けがでもしたらつまらないと思い、起きあがって、窓の障子をめ、左右を少しあけておいて、再び枕の上に仰向けになった。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
いたちのぞくような、鼠が匍匐はらばったような、切ってめたひしの実が、ト、べっかっこをして、ぺろりと黒い舌を吐くような、いや、念のった、雑多な隙間、れ穴が、寒さにきりきりと歯を噛んで
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこで四手駕籠の前棒に細工をして一貫子近江守かんしおうみのかみの一刀を抜身のままでめ込み、侍支度を小さな風呂敷包にして棒根へくくりつけ、誓願寺裏へ駕籠を置きざりにしておいては蜻蛉の辰を後棒にして
櫓臍にめて、漕いだ。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
黒の莫大小メリヤスの裏毛の付いたやつで、皺を延ばしてめた具合は少許すこし細くしまり過ぎたが、握つた心地こゝろもちは暖かであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いたちのぞくやうな、ねずみ匍匐はらばつたやうな、つてめたひしが、ト、べつかつこをして、ぺろりとくろしたくやうな、いや、ねんつた、雜多ざつた隙間すきまあなが、さむさにきり/\とんで
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かの女は黒い眼鏡をめた。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
こんなことを言って笑いながら、中でも好さそうなのをって夫に渡した。三吉は無造作に綴合とじあわせた糸を切って、縮んだ足袋を無理に自分の足にめた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)