国是こくぜ)” の例文
……その国是こくぜに不満なりといわば、万乗の君に、逆意を抱くも同じことであると、またも、彼の雄舌にくし立てられるにちがいない。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
衆議院議員は日本の国是こくぜを討議するための国民の代表者であって、府県会議員のように一地方の利害問題に局促きょくそくたるべきものではありません。
選挙に対する婦人の希望 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
日本の国是こくぜはつまり開戦説で、とうとうあの露西亜と戦をして勝ちましたが、あの戦を開いたのはけっして無謀にやったのではありますまい。
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その国是こくぜを概括して、世に開国進取の国是という。開国進取の国是を行うために我が国がこの運動を為すのを、即ち文明的運動というのである。
吾人の文明運動 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
一方「国是こくぜに合わぬ」ことはどこまでも厳酷に懲罰して仮借するところがないという「恐ろしさ」を諸侯に示すには得やすからざる好材料であった。
人種競争の避くべからざる所以ゆえんを歴史的に説いて「この覚悟で国民の決心を固め、将来の国是こくぜを定めないと、何十年後に亡国の恨みがないとも限らない、」
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
開国貿易の日本の独立において、国是こくぜにおいて、利益において、むべからざるを陳述し、遂にこれがために独り勢に迫らるるのみならず、理においても
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
批評的歴史家はその国是こくぜを事大主義であるという。しかし少くとも藝術においてはそうではない。朝鮮の藝術そのものが、それ自身の美において偉大である。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
故に国を強くし、殊に殖産を盛んにする国是こくぜの定まった以上は、職業のために——位地のためとは言わない——教育することは誰しも大いに賛成する所である。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「我国未曽有の変革を為さんとし、朕みづからを以て、衆に先んじ、天地神明に誓い、大いに斯の国是こくぜを定め、万民保全の道を立てんとす。衆亦此の旨趣ししゅに基き、協心努力せよ。」
仁愛の基礎の上にその国是こくぜを定めんか、或はえいのウイリヤム、ペンを学び、荒蕪こうぶを開き蛮民と和し、純然たる君子国を深森広野の中に建立けんりつせんか、或はべいのピーボデーを学び
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
どうしてもかねての国是こくぜに基づいて施設するところがなくてはならんようになったです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
全国の代表を集めて大いに国是こくぜを定め新制度新組織の建設に向かおうとするための公議所が近く東京の方に開かれるはずで、その会議も師のような人の体験と精力とを待っていた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
れから亜米利加アメリカに行き、その次には欧羅巴ヨーロッパに行き、又亜米利加に行て、ただ学問ばかりでなく実地を見聞けんもんして見れば、如何どうしても対外国是こくぜうように仕向しむけなければならぬと
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
改めて言ふまでもなくQ国の家屋は、その国是こくぜのっとつて、礎石と鉄骨を除くほかは壁も床も天井も屋根も、全部が無色の透明ガラスである。カーテンや家具や食器も、やはり同様である。
わが心の女 (新字旧仮名) / 神西清(著)
小安しょうあんをむさぼって守るを国是こくぜとなさんか、たちまち、魏呉両国は慾望を相結んで、この好餌こうじを二分してわかたんと攻めかかって来るや必せりである。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかして議会そのものは国民の意思を代表せるものにして、国民の意思が集合して国家の意思となり、国家のとするところ、即ち国是こくぜとなるのである。
選挙人に与う (新字新仮名) / 大隈重信(著)
批評的歴史家はその国是こくぜを事大主義であるという。しかし少くとも藝術においてはそうではない。朝鮮の藝術そのものが、それ自身の美において偉大である。
朝鮮の友に贈る書 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
国家の元気索然さくぜんとして、遂にた奮わず、この膝一たび屈して遂にた伸びず、故に一時逆流に立ち、天下の人心を鼓舞作興し、しかる後おもむろに開国の国是こくぜを取らんと欲したるのみ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
正直一徹で聞こえた大原三位重徳おおはらさんみしげとみなぞは、一度は恐縮し、一度は赤面した。先年の勅使が関東下向げこう勅諚ちょくじょうもあるにはあったが、もっぱら鎖攘さじょう(鎖港攘夷の略)の国是こくぜであったからで。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
僕はQ国の国是こくぜたる透明主義の洗礼を、まづここで受けたわけである。ついでに記しておけば、Q国の制服は男は無色透明、女は淡青色透明のガラス服であつて、一さい除外例を認めない。
わが心の女 (新字旧仮名) / 神西清(著)
如何だッて、この世の中に攘夷なんて丸で気狂いの沙汰じゃないか。「気狂いとは何だ、しからん事を云うな。長州ではチャント国是こくぜが極まってある。あんな奴原やつばら我儘わがままをされてたまるものか。 ...
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
すべての装飾がヨーロッパ風とネパール風の折衷せっちゅうであります。こりゃごく小事ですけれどもこの国の国是こくぜの方針がどんなものかということは、この室内の装飾でもちょっと知り得ることが出来るです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
天文、弘治以来、連年といってよいほどな両国間のたたかいに、親を討たれ、子をくし、或いは兄弟を失っているなど、箇々の宿怨は小さくもあれ、国是こくぜとして
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほとんど国是こくぜというものは明治初年以来一定不動のもので、今日こんにち並びに将来に於てこの開国の主義、もしくは開国進取というものは、決して変ずるものでないと信じております。
外交の方針 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
何事も叡慮えいりょを伺った上でないと朝廷のおぼし召しはもとより長防鎮庄の運命もどうなることであろうか、今般の征伐はしばらく猶予され、大小の侯伯の声に聞いて国是こくぜを立てられたい
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ネパールの今日とる国是こくぜとしては最も得策である。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
国民のなりと認むる事が、国是こくぜである。これが多数政治の原則である。
憲政に於ける輿論の勢力 (新字新仮名) / 大隈重信(著)