“唐子(からこ)” の例文
ちやうど朝鮮の李王家の美術館に在る葡萄の蔓の間に唐子(からこ)を染付けた水差の模様のやうにあひしらはうかと思つたが、それは失敗した。
本の装釘 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
思懸(おもいが)けず、何の広告か、屋根一杯に大きな布袋(ほてい)の絵があって、下から見上げたものの、さながら唐子(からこ)めくのに、思わず苦笑したが
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
子供はよく大人を観(み)る。さあこれからというもの、この唐子(からこ)は、おヒゲの小父ちゃんを見かけると、彼のあとを追っかけ廻して離れない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当日は両人で来て、仕事を頼むというので、どういう御注文かというと、唐子(からこ)が器物を差し上げている形を作ってくれという。
唐子(からこ)のような人が二人で笑っていた。あれが寒山と拾得とをかいたものである。寒山詩はその寒山の作った詩なのだ。詩はなかなかむずかしいと言った。
寒山拾得縁起 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
多町の鍾馗(しょうき)は山車中の王、一丈余の大人形で、錦の幕を垂れ、中央の大太鼓を唐子(からこ)風の男二人が左右から打つ。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
と叫びたいのを懸命で怺(こら)えたQX30だった。見よ! 見よ! あの女がいるではないか。敵の副司令が、唐子(からこ)になって、白々(しらじら)しくも踊っているのだ。決った!
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
お声に応じて、横手の、唐子(からこ)が戯(たわむ)れている狩野派(かのうは)の図(ず)をえがいた塗り扉をあけて、ひょっくりあらわれた人物を見ると、……誰だってちょっとびっくりするだろう。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
唐子(からこ)とは唐人(からびと)の義なり。家人(けにん)を家の子と稱し、奴隷をヤツコ(家の子の義)と稱するも同じ義なり。古代には、人を稍見下げて云ふ時に、子と云ひしものと見えたり。
「この床の間ぢやよ、——見事な大幅での、元(げん)時代のものにしては大した損傷(いたみ)もなく、目の覺めるやうな極彩色(ごくさいしよく)ぢや。五人の唐子(からこ)が牡丹(ぼたん)の咲き亂れる庭で、遊んでゐる圖ぢや」
多くは浅黄地(あさぎじ)にて裾(すそ)回りに色とりどりの図案にて七福神の踊りとか唐子(からこ)遊戯の図などが染出された木綿の長襦袢(ながじゅばん)のようなものである。祝着というても祝祭日に着るわけでもない。
吊籠と月光と (新字新仮名) / 牧野信一(著)
蜘蛛は薄紅色の乳房を二本の足で捉(とら)えて居るのだ。むっちりと、粘着する様な下腹の白い餅肌(もちはだ)には一人の唐子(からこ)がその乳房を求めて、小さな両手を差し上げて居る。童子(どうじ)も裸であった。
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
肥って丸い唐子(からこ)が子をとろ遊びをしている模様のお汁碗をくれました。
絵にある唐子(からこ)の姿で今も南京上海の街、田舎の辻々に遊んでいる。
中支遊記 (新字新仮名) / 上村松園(著)
春の野は唐子(からこ)抱(いだ)ける母も出(で)て夕陽こもれるよき空気なり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
墨梅(ぼくばい)の間(ま)、八景の間、雉子(きじ)の間、唐子(からこ)の間など、もう画工は不眠で描いているし、塵(ちり)も嫌う漆師は、朱欄や黒壁を塗りながら、わき目をふらず、職域に没頭している。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私(わたくし)は取(と)り敢(あ)へずこんな事(こと)を言(い)つた。床(とこ)の間(ま)に先頃(さきころ)掛(か)けてあつた畫(ゑ)をおぼえてゐるだらう。唐子(からこ)のやうな人(ひと)が二人(ふたり)で笑(わら)つてゐた。あれが寒山(かんざん)と拾得(じつとく)とをかいたものである。
寒山拾得縁起 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ところで第五景の「山賊邸(さんぞくてい)展望台」では唐子(からこ)の娘として、柳ちどりが出る。
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
山水に青丹瓦(あをにかはら)ぞ古りにける美豆良(みづら)の唐子(からこ)描(か)かばこの前(まへ)
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「併(しか)し、お前さんの唐子(からこ)は死んでるよ」
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
昼からさんざんせがまれていた朱同(しゅどう)は、たそがれ、まだ燈籠流しには早すぎるが、主人の唐子(からこ)を肩ぐるまに乗ッけて、長官邸から遠くもない地蔵寺へ出かけて行った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
怪しげなる囃(はやし)につれて、一隊の唐子(からこ)が踊りつつ舞台へ上ってきた。
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ちかぢかと我は眺むる野の日向遊ぶ唐子(からこ)の影走りをる
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ところへ、チョコチョコと、唐子(からこ)人形みたいな愛くるしい四ツばかりな男の子が入って来て、そこらで悪戯(いたずら)していたと思うと、朱同の髯(ひげ)が童心の好奇をそそったものとみえる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
絵に描いた唐子(からこ)のようによく肥えた亀一は、若い父の腕にも重かった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)