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可哀
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かはい
ふりがな文庫
“
可哀
(
かはい
)” の例文
暫
(
しばら
)
くして自分は千枝ちやんが
可哀
(
かはい
)
さうになつたから、奥さんに「もうあつちへ行つて、母とでも話してお出でなさい」と云つた。
東京小品
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
爺さんは慈悲心の深い人でしたから、これを見ると
可哀
(
かはい
)
さうで
堪
(
たま
)
らなくなりました。そこで爺さんは人混みを押分けて前に出て申しました——
竜宮の犬
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
「まあ、なんといふ
可哀
(
かはい
)
いお嬢様でございませう。あの薔薇の中に埋まつて入らつしやつたお美しさつてございませんね。」
薔薇
(新字旧仮名)
/
グスターフ・ウィード
(著)
数へ切れぬ程沢山打てば十二時で
午
(
ひる
)
だと云ふことを知つてゐる。最後の時計の音と同時に、
可哀
(
かはい
)
らしい声が耳元で囁く。「おぢいさん、お午。」
老人
(新字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
考へてみると、お前の心はいかにも
可哀
(
かはい
)
さうだ。わたしが少し力をかしてあげよう。こゝに
無患子
(
むくろじ
)
の実と銀の
鉢
(
はち
)
とがある。
シャボン玉
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
▼ もっと見る
大勢通つていつたが、見物の衆だつたんぢやのう。うむ、
可哀
(
かはい
)
さうなことぢやつたのう。お前さんは、又
何故
(
なぜ
)
そんなものを見に行かれたのぢや。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
可哀
(
かはい
)
さうだなあ。サルタノフを殺したのだから、掴まへられると、首がない。おい。早くボオトを一つ出して貰はう。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
「セミヨン・セミヨンニツチユさん。あつちへ行つて、猿を見ませうね。わたし猿が大好き。中には本当に
可哀
(
かはい
)
いのがありますわ。鰐は厭ですこと。」
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
丹子
(
たんこ
)
の事も、ねえ、考へて見りや
可哀
(
かはい
)
さうだし、あの子を始め阿母さんまで、私ばかりを
頼
(
たより
)
に為てゐるものを、さぞや私の
亡
(
な
)
い後には、どんなにか力も落さうし
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それは放して飼つてあつて、
檣
(
ほばしら
)
に昇つたり、船の底に這入つたりしてゐた。水兵が演習をすると、猿が真似をする。水兵はそれを見て面白がつて、皆で
可哀
(
かはい
)
がつてゐた。
猿
(新字旧仮名)
/
ジュール・クラルテ
(著)
可哀
(
かはい
)
さうな、
氣
(
き
)
の
毒
(
どく
)
らしい、あの、しをらしい、
可愛
(
かはい
)
い
蟲
(
むし
)
が、
何
(
なん
)
にも
知
(
し
)
つた
事
(
こと
)
ではないんですけれど、でも
私
(
わたし
)
、
鉦
(
かね
)
たゝきだと
思
(
おも
)
ひますだけでも、
氷
(
こほり
)
で
殺
(
ころ
)
して、
一筋
(
ひとすぢ
)
づゝ
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
若いものにはさう云ふ事は向くまい。殊に女に
可哀
(
かはい
)
がられる若いものにはと、主人は云つた。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
ムンムス
爺
(
ぢゝ
)
い。あれを見い。こんな
長閑
(
のどか
)
な空を見たことがあるかい。木の葉や草花がこんなに
可哀
(
かはい
)
らしく見えたことがあるかい。これからお前と二人でぶら/\歩いて別荘に往かう。
フロルスと賊と
(新字旧仮名)
/
ミカイル・アレクセーヴィチ・クスミン
(著)
それから肱を曲げて、その上に
可哀
(
かはい
)
らしい頭を載せて穏かに眠るのである。
クサンチス
(新字旧仮名)
/
アルベール・サマン
(著)
それにあの
情
(
じやう
)
の薄く我儘な私と三つ違いの
異母姉
(
ねえ
)
さんも
可哀
(
かはい
)
い姿で踊つた。
五歳
(
いつつ
)
六歳
(
むつつ
)
の私もまた引き入れられて、眞白に白粉を塗り、
派出
(
はで
)
なきものをつけて、何がなしに小さい手をひらいて踊つた。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「あゝ。聖者達の伝記で度々読んだ事があるが、悪魔が女の姿になつて出て来ると云ふのは本当か知らん。たしかに今のは女の声だ。しかもなんと云ふ優しい遠慮深い
可哀
(
かはい
)
らしい声だらう。えゝ。」
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
云はば兄弟のやうなものではありませんか? どうかわたしたち親子も願ひますから、
少
(
すこ
)
しは
可哀
(
かはい
)
さうだと思つてやつて下さい。
長崎小品
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そこで家来のものどもは、すぐに馬の尾一筋づゝを結んだ網をそこいら中に張りまはしますと、
可哀
(
かはい
)
さうに子鶉は、すぐ捕はれてしまひました。
孝行鶉の話
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
出しよつたのさ。切つて
味噌汁
(
みそじる
)
に入れて、喰べてしまはうかと思つたが、折角わしの
側
(
そば
)
へやつて来たのに、そんなことをするのも
可哀
(
かはい
)
さうぢやと思うて……。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
スタニスラウスは妹の足の早いのを、慾望的な、現世的な努力を表現してゐるやうに感じて、妹を警醒するやうな
口吻
(
こうふん
)
で、「兄は
可哀
(
かはい
)
さうな男だつたな」と云つた。
祭日
(新字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
細君は小さい、
可哀
(
かはい
)
らしい手を振つて、さも厭だと云ふ様子をして、己の前を遮つた。たつた今ブラシで掃除して
鑢
(
やすり
)
を掛けた爪には、薄赤い血が透き通つて見えてゐる。
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
わたしはたゞ、お前が
可哀
(
かはい
)
さうだから教へてあげたのだ。その代り、よくおぼえておきなさい。この無患子の実がなくなると一しよに、お前の体も
泡
(
あわ
)
となつて消えてしまふ。
シャボン玉
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
水兵仲間の一人は、この様子を見てゐて、
忽然
(
こつぜん
)
一種の疑念を生じて、猿を連れて来た水兵に言つた。「猿は
可哀
(
かはい
)
さうだな。やつぱりお主が処罰になつた方が面白かつたのに。」
猿
(新字旧仮名)
/
ジュール・クラルテ
(著)
兄弟や
姉妹
(
あねいもと
)
があつたか。それとも
可哀
(
かはい
)
らしい子供もあつたかも知れない。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
色が蒼くて、太つて、眉毛が一本もなくつて、小さい、鋭い、茶いろな目をしてゐるのです。若い方は、それまでつひぞ見たことのなかつた顔です。なんとも云へない、
可哀
(
かはい
)
らしい顔なのですね。
尼
(新字旧仮名)
/
グスターフ・ウィード
(著)
可哀
(
かはい
)
い、不行儀な奴め。己はお前のお蔭で、生甲斐があるやうに思つてゐた。己の為めには時間が重苦しい歩き付きをしてならないのだが、あの女と付き合つてゐる間は
晷
(
ひかげ
)
の移るのを忘れてゐた。
クサンチス
(新字旧仮名)
/
アルベール・サマン
(著)
均
(
ひと
)
しく尽きる命数を、よしや
些
(
ちと
)
ばかり早めたと云つて、何事かあらう。
可哀
(
かはい
)
い娘が復讐の
旨味
(
しみ
)
を
嘗
(
な
)
めるのを妨げなくても好いではないか。己は毎晩その恐ろしい杯を、微笑を含んで飲み干してゐる。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
酷
(
むご
)
や、
可哀
(
かはい
)
や、二百の人形
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
父 うん、あんまりその
容子
(
ようす
)
が人間のやうに見えたもんだから、
可哀
(
かはい
)
さうになつてよしてしまつたつて。
虎の話
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
笛吹がうつむき加減にしてゐる顔を見ながら、武士は
可哀
(
かはい
)
さうだと思つた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
「捨てられたんだな。
可哀
(
かはい
)
さうだなあ。……
俺
(
おれ
)
が拾つていつてやらう。」
犬の八公
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
白状の
序
(
ついで
)
に今一歩進んで言へば、己はあの唇に接吻する事も厭ではなかつた。実にあの唇は
可哀
(
かはい
)
らしい。どうかしてにつこり笑ふと、赤い唇の間から、すぐつた真珠のやうな歯が二列に並んで見える。
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
紳士は
可哀
(
かはい
)
らしくて、上品な体附きをしてゐた。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
「ゐられなえたつて、仕かたがなえぢや。この中へ他人でも入れて見なせえ。広も
可哀
(
かはい
)
さうだし、お前さんも気兼だし、第一わしの気骨の折れることせつたら、ちつとやそつとぢやなからうわね。」
一塊の土
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
可
常用漢字
小5
部首:⼝
5画
哀
常用漢字
中学
部首:⼝
9画
“可哀”で始まる語句
可哀想
可哀相
可哀気
可哀氣