南向みなみむ)” の例文
「ひとりぐらいは、柳生のつるにも、ああいう変質へんなりの瓜もできてよかろう。——宗矩のごときは、余りに南向みなみむきのやぶ竹でありすぎるからの」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まことや、ひとんでけむりかべるで、……たれないとると、南向みなみむきながら、ざしもうすい。が、引越ひきこすとすればなんにはらぬ。……をりからいへさがしてた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とこの横にちがだながあって、えんと反対の側には一間いっけん押入おしいれが付いていました。窓は一つもなかったのですが、その代り南向みなみむきの縁に明るい日がよく差しました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うめはもと/\土地とちかわいた日當ひあたりのよいところにてきし、陰地かげちには、ふさはないですから、梅林うめばやしつくるには、なるべく南向みなみむきで土地とち傾斜けいしやしたところがよいのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
さうつぶやきながら、わたし部屋へやすみからまくらめぐらして、あかるい障子しやうじはうにそのおもてけた。南向みなみむきといふことなんといふ幸福かうふくことであらう、それはふゆ滋養じやう大半たいはん領有りやういうする。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
むらさき香煙こうえんが、ひともとすなおに立昇たちのぼって、南向みなみむきの座敷ざしきは、硝子張ギヤマンばりなかのようにあたたかい。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)