北山きたやま)” の例文
そしてうちの左の方は加茂川かもがはなのです。綺麗きれいな川なのですよ、白い石が充満いつぱいあつてね、銀のやうな水が流れて居るのです。東山ひがしやま西山にしやま北山きたやまも映ります。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いや、色氣いろけどころか、ほんたうに北山きたやまだ。……どうふだ。が、家内かない財布さいふじりにあたつてて、安直あんちよくたひがあれば、……魴鮄はうぼうでもいゝ、……こひねがはくは菽乳羮ちりにしたい。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
北山きたやまにつらなるくも青雲あをぐも星離ほしさかりゆきつきさかりて 〔巻二・一六一〕 持統天皇
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
そのうちに、花が咲いたと云う消息が、都の人々の心を騒がし始めた。祇園ぎおん清水きよみず東山ひがしやま一帯の花がず開く、嵯峨さが北山きたやまの花がこれに続く。こうして都の春は、愈々いよいよ爛熟らんじゅくの色をすのであった。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そのころわたくしどもは北山きたやま掘立小屋ほったてごや同様の所に寝起きをいたして、紙屋川かみやがわの橋を渡って織場へかよっておりましたが、わたくしが暮れてから、食べ物などを買って帰ると、弟は待ち受けていて
高瀬舟 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
京都で名物の大原おはら北山きたやま柴売女しばうりおんなをべつにすると、だいたいにこの風習は海近くの村里むらざと、ことにうおなどを売りあるく婦人にばかり多いので、なにか職業や家筋いえすじにむすびついた特別の技術のように
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
成親の奥方は、その頃、北山きたやま雲林院うんりんいんの近くに忍び暮しを続けていた。
北山きたやまあたりいそぎぬ。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
おなかがへッて北山きたやま
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの人ならとあのかたのことをお云ひになつたのだと云ふこと、京の北山きたやまの林の中へ鉄砲を持つてはひつて、あのかたと添はれない悲しみに死なうとなすつたこと
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
わツといつてけて、あとをもずに五六町ごろくちやう彌次やじさん、北八きたはち、とかほ見合みあはせ、たがひ無事ぶじしゆくひ、まあ、ともかくもはしさう、はら丁度ちやうど北山きたやまだ、筑波つくばおろしもさむうなつたと
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)