トップ
>
佃
>
つくだ
ふりがな文庫
“
佃
(
つくだ
)” の例文
たとへば春さき灰緑に芽ぐんで來る
佃
(
つくだ
)
島の河沿の河原の草などを見る時分には、どうしても黒田さんの
樣風
(
マニエエル
)
を想ひ出さずには居られない。
京阪聞見録
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
「あら、本当だよ。去年の秋
嫁
(
かたづ
)
いて……金さんも知っておいでだろう、以前やっぱり
佃
(
つくだ
)
にいた魚屋の吉新、吉田新造って……」
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
年じゅう
素股
(
すまた
)
の魚屋から、裸商売の
佃
(
つくだ
)
から来るあさり売りまで、異国の人に対しては、おのれらの風俗を赤面するかに見える。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
佃
(
つくだ
)
の者で四十男、伊勢新の釣に網のお供をさせられますが、金にはなっても、人も
無気
(
なげ
)
な豪勢振りが、少し
小癪
(
こしゃく
)
に障っているらしい
口吻
(
くちぶり
)
です。
銭形平次捕物控:069 金の鯉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
長屋中の弥次馬の波を分けて、橋詰のお番屋へ富五郎を
縛引
(
しょっぴ
)
いた藤吉と勘次、
佃
(
つくだ
)
にかかる新月の影を踏んで早くも今は合点小路へのその帰るさ。
釘抜藤吉捕物覚書:04 槍祭夏の夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
呟
(
つぶ
)
やいたまま、うっとりとして、三叉の銀波、
佃
(
つくだ
)
の
芦
(
あし
)
の洲などに眼を取られて、すぐ桟橋へ上がろうともしなさらない。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
金造 この間二軒茶屋の前で、
佃
(
つくだ
)
の者と喧嘩して、相手に疵をつけた時、俺を庇ってくれたのはあの人だよ。
中山七里 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
一日のはげしい勞働につかれて、機械が吐くやうな、重つくるしい煙りが、
石川島
(
いしかはじま
)
の工場の烟突から立昇つてゐる。
佃
(
つくだ
)
から出た
渡船
(
わたしぶね
)
には、
職工
(
しよくこう
)
が多く乘つてゐる。
佃のわたし
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
……
彼岸
(
ひがん
)
の中日から以後十日までのあいだは中川の川口、それ以後は、
佃
(
つくだ
)
と川崎が目当て場になります
顎十郎捕物帳:04 鎌いたち
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
朝早く自分たちは蘆のかげなる稽古場に衣服を脱ぎ捨て
肌襦袢
(
はだじゅばん
)
のような短い水着一枚になって大川筋をば汐の流に
任
(
まか
)
して
上流
(
かみ
)
は
向島
(
むこうじま
)
下流
(
しも
)
は
佃
(
つくだ
)
のあたりまで泳いで行き
夏の町
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ほかにも六蔵、重吉、紋次、鉄蔵という同類があって、うわべは堅気の町人のように見せかけながら、手下の船頭どもを使って品川や
佃
(
つくだ
)
の沖のかかり船をあらしていた。
半七捕物帳:32 海坊主
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
……
嘗
(
かつ
)
て
佃
(
つくだ
)
から、「
蟹
(
かに
)
や、
大蟹
(
おほがに
)
やあ」で
來
(
く
)
る、
聲
(
こゑ
)
は
若
(
わか
)
いが、もういゝ
加減
(
かげん
)
な
爺
(
ぢい
)
さんの
言
(
い
)
ふのに、
小兒
(
こども
)
の
時分
(
じぶん
)
にやあ
兩國下
(
りやうごくした
)
で
鰯
(
いわし
)
がとれたと
話
(
はな
)
した、
私
(
わたし
)
は
地震
(
ぢしん
)
の
當日
(
たうじつ
)
、ふるへながら
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
彼は、
佃
(
つくだ
)
一郎という姓名であった。C大学で比較言語学を専攻し、古代の印度、イラニアン語をやっているのだそうだ。国は裏日本で、研究の
傍
(
かたわら
)
、Y・M・C・Aの仕事を手伝っていた。彼は
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
川上から流す大
筏
(
いかだ
)
など、一方越中島口には外輪車の蒸汽船が江戸川通い、なまぬるい汽笛を後に悠々と出て行く姿、遠く
佃
(
つくだ
)
沖の真帆片帆、房州から来る押送りの魚船など、江戸の繁昌を持ち越した形
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
「——
佃
(
つくだ
)
の三之助、御用だぞ」
暴風雨の中
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
いえね、あの病気は始終そう附き
限
(
き
)
りでいなけりゃならないというのでもないから……それに、今日
佃
(
つくだ
)
の方から雇い婆さんを
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
「ところで親分、これがあべこべだと話になりませんよ。お寿は
佃
(
つくだ
)
で育って、あんな
華奢
(
きゃしゃ
)
に見えるくせに、泳ぎは
河童
(
かっぱ
)
の雌ほどうまいそうですよ」
銭形平次捕物控:053 小唄お政
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
船はいつしか狭い堀割の間から
御船手屋敷
(
おふなでやしき
)
の石垣下を
廻
(
めぐ
)
ってひろびろとした
佃
(
つくだ
)
の
河口
(
かわぐち
)
へ出た。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
たった一人の、
佃
(
つくだ
)
のおふくろにまで、愛想を尽かされて、湯灌場にさえ屋根代を出さねえじゃならねえ奴を、どうお間違えなすったか、来なくッちや
厭
(
いや
)
、寂しい、と勿体至極もねえ。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
河上
(
かみ
)
の方から出てきた船は、
下流
(
しも
)
の
佃
(
つくだ
)
の方まで流してゆく。下流の方から出てきた船は竹屋を越えて綾瀬の方まで涼風におしおくられてゆく。そして夕暗といっしょに両方がまた
漕
(
こ
)
ぎよせてくる。
旧聞日本橋:17 牢屋の原
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
実はね、
横浜
(
はま
)
からこちらへ来るとすぐ
佃
(
つくだ
)
へ行って、お光さんの元の家を訪ねたんだ。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
「海なら、
佃
(
つくだ
)
からでも、あたしの
宅
(
うち
)
の座敷からも見えるのに。」
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
佃
(
つくだ
)
々と急いで
漕
(
こ
)
げば
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“佃”の解説
佃(つくだ)は、中世日本の荘園公領制において、荘園領主や荘官・地頭らによる直営田をいう。年貢や公事の賦課が免除され、収穫物をすべて領主が収取した。手作・用作・正作・門田とも。本家・領家など上級領主による直営田を佃とし、荘官・地頭など下級領主によるものを正作・用作として区分することもあるが、中世当時は必ずしも明確に区分されていたわけではなかった。
(出典:Wikipedia)
佃
漢検準1級
部首:⼈
7画
“佃”を含む語句
佃島
佃煮
佃煮屋
佃久太夫
佃島住吉
新佃島
本佃
海苔佃煮
陸佃