仰様のけざま)” の例文
旧字:仰樣
と両手に襟を押開けて、仰様のけざま咽喉仏のどぼとけを示したるを、謙三郎はまたたきもせで、ややしばらくみつめたるが、銃剣一閃いっせんし、やみを切って
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と満枝の手首にすがれるまま、一心不乱の力をきはめて捩伏ねぢふ捩伏ねぢふせ、仰様のけざま推重おしかさなりてたふしたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と言いながらお村を抱き起そうとする時、うしろから飛下りながら文治郎がプツリッと拝み討ちに斬りますと、脳をかすり耳を斬落きりおとし、肩へ深く斬り込みましたから、あっと仰様のけざまに安兵衞が倒れました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
声に応じて牛頭馬頭は光子を仰様のけざまに引倒し、一人が両手、一人が両足、取って押えて動かさず。「ああれ。」光子は虫の声。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
猛獣犠牲いけにえて直ぐには殺さず暫時しばらくこれをもてあそびて、早あきたりけむ得三は、下枝をはたと蹴返せば、あっ仰様のけざまたおれつつ呼吸いきも絶ゆげにうめきいたり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「秀、秀、私が悪かった。ああああ、苦しい。たまらない、あれッ、あれッ。」とおどり上りて室内を狂奔せるが、あたかも空中にものありて綾子をつかみて投げたるごとく、仰様のけざまに打倒れぬ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
向うに仰様のけざまに寝て、両肱りょうひじを空に、後脳を引掴ひッつかむようにして椅子にかかっていたのは、数学の先生で。看護婦のような服装で、ちょうど声高に笑ったおんなは、言わずとも、体操の師匠である。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
赤蛙あかがえるが化けたわ、化けたわと、親仁おやじ呵々からからと笑ったですが、もう耳も聞えず真暗三宝まっくらさんぼう。何か黒山くろやまのような物に打付ぶッつかって、斛斗もんどりを打って仰様のけざまに転ぶと、滝のような雨の中に、ひひんと馬のいななく声。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と見れば美人は仰様のけざままろび、緑髪は砂にまみれて白きかかとは天に朝せり。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おもはず突立つゝたつと、出来できかゝつたざうのぞいて、つの扁平ひらたくしたやうな小鼻こばなを、ひいくひいく、……ふツふツはツはツといきいてたのが、とがつたくち仰様のけざまひとつぶるツとふるふと、めんさかさまにしたとおもへ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
画工 (疲果てたるさまどう仰様のけざまに倒る)水だ、水をくれい。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
画工 (疲果つかれはてたるさまどう仰様のけざまに倒る)水だ、水をくれい。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)