九歳ここのつ)” の例文
徒弟の善周は船橋在の農家の次男で、九歳ここのつの秋からこの寺へ来て足かけ十二年になるが、年の割には修行が積んでいる。品行もよい。
半七捕物帳:22 筆屋の娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もっとも一人じゃなかったです。さる人に連れられて来たですが、始め家を迷って出た時は、東西もわきまえぬ、取って九歳ここのつ小児こどもばかり。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
八月の暑い午後、九歳ここのつのあんぽんたんは古帳面屋ふるちょうめんやのおきんちゃんに連れられて、附木店つけぎだなのおきんちゃんの叔母おばさんの家へいった。
まだおさない九歳ここのつの子ではあるが、軽く抱いて、置き換えられないようなおおきさというか、気品というか、威というか、そんな気持をうけた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
九歳ここのつ。』と、その松三郎が自分で答へた。膝に補布つぎを当てた股引を穿いて、ボロ/\の布の無尻むじりを何枚も/\着膨れた、見るから腕白らしい児であつた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「いいのよ、其様そうしてお置きなさいよ、源ちゃん最早もうお寝み、」と客の少女は床なる九歳ここのつばかりの少年を見て座わり乍ら言って、其のにこやかな顔に笑味を湛えた。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
フリードリヒは九歳ここのつになった。それは*5御公現ごこうげんの祝日の頃の、はげしい寒風の吹きすさぶ冬の夜のことであった。ヘルマンはある結婚式に招かれて出かけて行った。
八歳やつつ九歳ここのつ後から暗い魂に浸る運命となつたわたしに、この記憶がわたしの一生の或る頃の年代、つまりこの人生を絶望し見限つてゐた二十五六の厭世時代に、不意に蘇つて來てくれたことは
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
雛祭りする九歳ここのつ
枯草 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
九歳ここのつの兒が顫へて
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
ボンタン九歳ここのつ
ザボンの実る木のもとに (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
「おもとが、さようにまでいったことは、九歳ここのつの時、得度とくどを授けてから今日まで、わしは初めて聞いた。よほど大願よな」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と先生はちょっと口のうちで繰返したが、直ぐにその意味こころを知ってうなずいた。今年九歳ここのつになる、校内第一の綺麗きれいな少年、宮浜浪吉といって、名まで優しい。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は九歳ここのつの時に浅草の仲見世で諏訪法性すわほっしょうの兜を買ってもらいましたが、しころの毛は白い麻で作られて、私がそれをかぶると背後うしろに垂れた長い毛は地面に引摺ひきずる位で
我楽多玩具 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それが、九歳ここのつ十歳とうの時、大地主の白井様が盛岡から理髪師とこやを一人お呼びなさるといふ噂が、恰も今度源助さんが四年振で来たといふ噂の如く、異様な驚愕おどろきを以て村中に伝つた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
自慢の弟子にしてくれていた長唄六三郎派の老女としより師匠から、義理で盲目めくらの女師匠に替えられたりして、面白味をなくしていたせいか、九歳ここのつの時からはじめていた、二絃琴の師匠の方へばかりゆくのが
猛然として憶起おもいおこした事がある。八歳やッつか、九歳ここのつの頃であろう。雛人形ひなにんぎょうきている。雛市は弥生やよいばかり、たとえば古道具屋の店に、その姿があるとする。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
間もなく、父の方からは、追手が来て、九歳ここのつの彼は、裸馬の背に縛られて、播州からふたたび、美作みまさかの吉野郷宮本村へ連れもどされた。父の無二斎はひどく怒って
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『今年は来ない? 何だ、それぢや其児は九歳ここのつか、十歳とをかだな?』
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
私が以前美女ヶ原で、薬草を採ったのは、もう二十年、十年が一昔ひとむかし、ざっと二昔ふたむかしも前になるです、九歳ここのつの年の夏。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「でも、だめでございます。まだ、九歳ここのつのお弟子に、登岳とうがくをおゆるしになるはずがあるものですか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉は、自分のびんを撫でた。かれの頭髪はまだ黒い。はっきり光秀とは、九歳ここのつの年下を示している。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私はまだ九歳ここのつ時分のことだから、どんなだか、くわしい訳は知らないけれど、母様おっかさんは、お前、何か心配なことがあって、それで世の中が嫌におなりで、くよくよしていらっしゃったんだが
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
九歳ここのつの時、ふと家を出て、播州ばんしゅうの母の所へ、はしってしまったのも、母から一言
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
九歳ここのつ十歳とおばかりのその小児こどもは、雪下駄、竹草履、それは雪のてた時、こんな晩には、柄にもない高足駄たかあしださえ穿いていたのに、転びもしないで、しかも遊びに更けた正月のの十二時過ぎなど
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし九歳ここのつで越した折は、じいさんの船頭がいて船を扱いましたっけ。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「やはり汝は、この筑前ちくぜんよりも、九歳ここのつはたしかに若いな」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老公がまだ八つか九歳ここのつの頃だったという。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
少年はことし九歳ここのつになった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日吉が九歳ここのつの秋だった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)