不測ふそく)” の例文
日々曇り日々晴れ、朝夕不測ふそくの風雲をくりかえしているではありませんか。しかもかぜるるといえ、天体そのものが病みわずらっているわけではない。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この日の薄暮はくぼごろに奈々子の身には不測ふそくわざわいがあった。そうして父は奈々子がこの世を去る数時間以前奈々子に別れてしまった。しかも奈々子も父も家におって……。
奈々子 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
御承知でもありましょうが、近来どうしたものか、われわれ科学者仲間におきまして、不測ふそくの災害にたおれるものが少くない、いや、むしろ甚だ多いと申す方がよろしいようであります。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
特に封建制馭せいぎょの道いままったからず、各大名の野心あるもの、あるいは宗教を利用し、もしくは利用せられ、あるいは外邦と結托けったくし、あるいは結托せられ、不測ふそくへんしょうずるもいまだ知るべからず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
耻を申さねば判らぬが、三日前、當江戸上屋敷に、不測ふそくの大事が起り、拙者と大垣殿は既に腹まで掻切らうといたしたが、一藩の興廢こうはいかゝはる大事、一人や二人腹を切つて濟むことではない。
とほしまちかえ、ちかふねかへつとほえ、其爲そのため數知かずしれず不測ふそくわざはひかもして、この洋中やうちゆう難破なんぱせる沈沒船ちんぼつせん船體せんたいすで海底かいていちて、名殘なごり檣頭しやうとうのみ波間はかん隱見いんけんせるその物凄ものすご光景くわうけいとふらひつゝ
「さても、お久しいことでござった。今日、こうして無事な姿が見られようとは、まことに、禍福かふくあざなえる縄のごとしとか。人生の不測ふそく、分らないものですな」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「すると、不測ふそくの戦闘が起ったというわけですね」
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
が——それだけに、彼女にとっては、なおさら一期いちごの折であった。相手の小次郎に武蔵が敗れるとは思えなかったが、不測ふそくな敗北がないとはまた、いえない気もする。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兵を用いるや神算鬼謀しんさんきぼう、敵をあざむくや表裏不測ふそくでありながら、いくさを離れて、その人間を観るときは、実に、ともいえるほど正直な道をまっすぐに歩いた人であった。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世の中とはかくも不測ふそくなものなのか。一瞬いっときは驚く心すらしびれて、涙も出なければ、声も出ない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(近々に、不測ふそくを起し、勢州ともちょうじ合わせ、秀吉のうしろをるべし)
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただならぬ時節がらの中を、こよいは曲げてお越しくだされ、一しおありがとうぞんじまする。実は、出先にちと不測ふそくの事が起りまして、十河そごう殿の御陣所へ捕われてゆき、そのため、お迎えの礼を
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、不測ふそく変事へんじは、いつも、こうして意表外いひょうがいなところから顔をだす。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不測ふそくこと
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)