下等かとう)” の例文
わたくしはこのときはじめて、ひやうのない疲勞ひらう倦怠けんたいとを、さうしてまた不可解ふかかいな、下等かとうな、退屈たいくつ人生じんせいわづかわすれること出來できたのである。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「てめぃ、ビールだるから、なんか、ことづかったろうが」男爵と呼ばれる青年は、姿に似ぬ下等かとうな言葉を、はいた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
旅僧たびそうわたしおなじすしもとめたのであるが、ふたけると、ばら/\と海苔のりかゝつた、五目飯ちらし下等かとうなので。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたくしかんがへではこれそも/\生活せいくわつづくべきものだらうと。また有機體いうきたい下等かとうればけ、よりすくなものかんずるのでらうと、其故それゆゑによりよわ刺戟しげきこたへるのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
成経 野武士らはわしの懇願こんがん下等かとう怒罵どばをもって拒絶した。そして扉を破って闖入ちんにゅうし、武者草鞋むしゃわらじのままでわしのやかた蹂躪じゅうりんした。わしはすぐに飛び出て馬車に乗った。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
(楊がまっ青に光ったり、ブリキのかわったり、どこまで人をばかにするのだ。ことにその青いときは、まるで砒素ひそをつかった下等かとう顔料えのぐ[※2]のおもちゃじゃないか。)
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いもなんて下等かとうなものはきらいだよ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いやいや、そんな下等かとうなものではありません。ちえのていどからいって、わが人類にまさるとも、よりおとるとは考えられない恐るべきかしこい生物なのです」
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたくしかんがえではこれがそもそも生活せいかつづくべきものだろうと。また有機体ゆうきたい下等かとうればるだけ、よりすくなものかんずるのであろうと、それゆえによりよわ刺戟しげきこたえるのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
この隧道トンネルなか汽車きしやと、この田舍者ゐなかもの小娘こむすめと、さうしてまたこの平凡へいぼん記事きじうづまつてゐる夕刊ゆふかんと、——これが象徴しやうちようでなくてなんであらう。不可解ふかかいな、下等かとうな、退屈たいくつ人生じんせい象徴しやうちようでなくてなんであらう。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)