上様うえさま)” の例文
旧字:上樣
かねて仰せだされ候通り、一橋中納言殿ひとつばしちゅうなごんどの御相続遊ばされ、去る二十日より上様うえさまと称し奉るべきむね、大坂表において仰せ出だされ候。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
上様うえさまのおいいつけによって、御庭案内といたして黒鍬組頭くろくわくみがしら小早川剛兵衛ごうべえ、只今、竹の間のお沓石くつぬぎにてお待ちうけ申し上げておりまする」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう上様うえさま枚方ひらかたあたりまでお上りになった時分であろう、などゝ云うのが聞えて参りましたので、さては御運の強き大将軍にてましますことよ
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「眉間の傷はのう。お城へ参っても有難い守り札じゃ。上様うえさまはいつもながらの御名君、先ず先ず腹も切らずに済んだというものじゃ。ゆっくりゆけい」
亀背で小男の愚楽老人ぐらくろうじん、この上様うえさまのお風呂番ふろばんは、あかすり旗下はたもとと呼ばれて、たいへんな学者で、かつ人格者だった。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
清八は得たりと勇みをなしつつ、圜揚まるあげ(まるトハ鳥ノきもいう)の小刀さすが隻手せきしゅに引抜き、重玄を刺さんと飛びかかりしに、上様うえさまには柳瀬やなせ、何をすると御意ぎょいあり。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
御臨終のみぎり嫡子ちゃくしまる殿御幼少なれば、大国の領主たらんこと覚束おぼつかなく思召され、領地御返上なされたき由、上様うえさまへ申上げられ候処、泰勝院殿以来の忠勤を思召され
お細工仰せつけられしは当春の初め、その後すでに半年をも過ぎたるに、いまだ献上いたさぬとはあまりの懈怠けたい、もはや猶予は相成らぬと、上様うえさま御機嫌ごきげんさんざんじゃぞ。
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「八兄哥、血のことを気にするようじゃ、鎌鼬かまいたちという見当だね。鎌鼬は傷の深い割に血の出ないものだっていうが、江戸は上様うえさまのお膝元で、鎌鼬は昔から出ねえことになっているぜ」
上様うえさまは、いつも寝所におで遊ばされるのか」
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
(茶々のお方も、もう十八でございますもの。なんで上様うえさまが、ただ花生けの花のように、眺めてばかりいらっしゃいましょう)
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上様うえさまの御馬前に花と散って、日ごろの君恩に報い、武士もののふの本懐とげる機会もござりましょうに、かように和平あいつづきましては、その折りとてもなく
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
傍にいた者が「それこそは江戸の上様うえさまよりの下され物でござる」と云うと、「江戸の上様とは誰のことでござる」と、又押し返して尋ねるので、「徳川殿じゃ」と云って聞かせると
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ある時石川郡いしかわごおり市川いちかわ村の青田あおた丹頂たんちょうの鶴くだれるよし、御鳥見役おとりみやくより御鷹部屋おたかべや注進になり、若年寄わかどしよりより直接言上ごんじょうに及びければ、上様うえさまには御満悦ごまんえつ思召おぼしめされ、翌朝こく御供揃おともぞろい相済み
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かくまで御憂慮あらせらるる上様うえさまのお心になって、一同、いかようにも、あなたの御方針にそい、この際の御苦境と難問題の解決に、各〻おのおの
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上様うえさまに取り次いでくれ、いや、お取り次ぎ申すわけにはまいらぬ……そんなことを言い合っているようだ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そのまえに上様うえさまへこの田爺でんやからおみやげを献じたい。何ご不自由もない柳営へ持ち参らするような産物は水戸にもない。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十月へはいって初のの日で、御玄猪ごげんちょのお祝い、大手には篝火かがりびをたき、夕刻から譜代大名が供揃い美々びびしく登城して、上様うえさまから大名衆一統へいのこ餅をくださる——これが営中年中行事の一つだが
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「追って、くわしくは、上様うえさまのご印可をいただいて、後刻、おおやけの書状をもって当所へお達しするであろう」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上様うえさまにも、ひとかたならぬ御心痛でのう」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「それはとにかく、このような侘しい家においででは、定めしご不自由でござりましょう。また上様うえさまにお願いして、どこぞへ美々しいお屋敷を建てて戴きまする」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上様うえさま、御覧あそばしましたか」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上様うえさま……」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)