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やりみづ
御尤です……あんなに
丹精をなさいましたから……でも、お
引越しなすつたあとでは、
水道を
留めたから、
遣水は
涸れました。
垣根の
近邊たちはなれて、
見返りもせず二三
歩すゝめば
遣水の
流がれおと
清し、
心こゝに
定まつて
思へば
昨日の
我れ、
彷彿として
何故ゑに
物おもひつる
身ぞ
さるほどに
今歳も
空しく
春くれて
衣ほすてふ
白妙の
色に
咲垣根の
卯の
花、こゝにも一
ツの
玉川がと、
遣水の
流れ
細き
所に
影をうつして、
風なくても
凉しき
夏の
夕暮、いと
子湯あがりの
散歩に
くツきりとした
頸脚を
長く
此方へ
見せた
後姿で、
遣水のちよろ/\と
燈影に
搖れて
走る
縁を、すら/\
薄彩に
刺繍の、
數寄づくりの
淺茅生の
草を
分けつゝ
歩行ふ、
素足の
褄はづれにちらめくのが。
其方の……
貴女のお
庭に、ちよろ/\
流れます
遣水のふちが、
此の
頃は
大分茂りました、
露草の
青いんだの、
蓼の
花の
眞赤なんだの、
美しくよく
咲きます……
其の
中で
鳴いて
居るらしいんですがね。