黄牛あめうし)” の例文
それで逢いたさの余りに、諸方をあるいて黄牛あめうしを買い集め、九百九十九疋までは手に入ったが、残り一匹はどうしても見つからない。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
荘丁いえのこ、女わらべも総がかりで、炊出しにかかる。黄牛あめうし、羊、鶏、豚、あひる、およそ園菜家畜をあげて、調理の鍋、大釜にぶちこまれた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
牛商人は、笑ひながら、黄牛あめうしの額を、撫でた。彼はどこまでも、これを、人の好い伊留満の、冗談だと思つてゐるらしい。
煙草と悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
今ここへ駈け込んで来た人は、身のたけおよそ七尺もあろうかと思われるあから顔の大男で、黄牛あめうしの皮鎧に真っ黒な鉄の兜をかぶって、手には大きいまさかりを持っていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
山から薪を着けて来た一疋の黄牛あめうしが、その旋風に捲きあげられて大根畑の中に落とされた。
不動像の行方 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
南昌なんしやう早池峰はやちねの四峯を繞らして、近くは、月に名のある鑢山たたらやま黄牛あめうしの背に似た岩山、杉の木立の色鮮かな愛宕山を控へ、河鹿鳴くなる中津川の浅瀬にまたがり、水音ゆるき北上の流に臨み
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
其間そのあひだに褐色の屋根や白い壁をもたげて田舎家ゐなかやが散らばり、雨上りの濁つた沼のほとりには白まだら黄牛あめうしが仔牛をれて草をみ、遠方の村村むらむらの上にそびえた古い寺院の繊細きやしやな尖塔が、白楊はくやうのひよろ長い
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
この眺めゆたかにさみ黄牛あめうし家路いへぢの舟に日を見かへりぬ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
原ににれがむ黄牛あめうし
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
黄牛あめうしは声もものう
(新字旧仮名) / 末吉安持(著)
そのあとからは、めずらしく、黄牛あめうしかせた網代車あじろぐるまが通った。それが皆、まばらがますだれの目を、右からも左からも、来たかと思うと、通りぬけてしまう。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その中の黄牛あめうしに田器を負わせて田舎に将往かんとすとあって、田舎の二字をいつの頃よりかイナカと訓ませている。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
また茶店の朱貴は、大甕おおがめ十箇の酒をあけ、三頭の黄牛あめうしをつぶし、ぞんぶんに大勢の腹を賑わした。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遠く岩手いはて姫神ひめかみ南昌なんしやう早池峰はやちねの四峰をめぐらして、近くは、月に名のある鑢山たゝらやま黄牛あめうしの背に似た岩山いはやま、杉の木立の色鮮かな愛宕山あたごやまを控へ、河鹿かじか鳴くなる中津川の淺瀬に跨り、水音ゆるき北上の流に臨み
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
黄牛あめうしよ、はなにおもふ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うそぶき吼ゆる黄牛あめうしよ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
そうして百足の草履とか千頭の黄牛あめうしとかの、余りにも奇抜な条件すらも、信州の千駄の厩肥きゅうひに比較することによって、始めてその来由を明らかにすることが出来る。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
牛商人は、とうとう、約束の期限の切れる晩に、又あの黄牛あめうしをひつぱつて、そつと、伊留満の住んでゐる家の側へ、忍んで行つた。家は畑とならんで、往来に向つてゐる。
煙草と悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
うそぶゆる黄牛あめうしよ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
すると、或日の事、(それは、フランシス上人が伝道の為に、数日間、旅行をした、その留守中の出来事である。)一人の牛商人うしあきうどが、一頭の黄牛あめうしをひいて、その畑の側を通りかかつた。
煙草と悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)