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ひにく
ふりがな文庫
“
髀肉
(
ひにく
)” の例文
昼はかくれて、不思議な星のごとく、
颯
(
さっ
)
と
夜
(
よ
)
の幕を切って
顕
(
あらわ
)
れる
筈
(
はず
)
の処を、それらの英雄
侠客
(
きょうかく
)
は、
髀肉
(
ひにく
)
の
歎
(
たん
)
に堪えなかったに相違ない。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「さだめし、そちの
髀肉
(
ひにく
)
も、だいぶ肥えたであろう。即刻、
信貴山
(
しぎさん
)
におる信忠の加勢に
赴
(
ゆ
)
け。——こんどは陣中で喧嘩などすな」
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
○英雄には
髀肉
(
ひにく
)
の
嘆
(
たん
)
といふ事がある。文人には
筆硯生塵
(
ひっけんちりをしょうず
)
といふ事がある。余もこの頃「錐錆を生ず」といふ嘆を起した。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
端役には惜しい——
髀肉
(
ひにく
)
の歎に堪へぬと謂つた感じを持たせた——おしだしと器量で、薄闇にぽつかり夕顔の咲いたやうな感動を誘うたものだつた。
街衢の戦死者:――中村魁車を誄す――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
ですから、
僅々
(
きんきん
)
数日の間に、すべての名所古蹟といったようなものを見尽してしまうと、彼の天性の迅足の
髀肉
(
ひにく
)
が、
徒
(
いたず
)
らに肥えるよりほかはせん
術
(
すべ
)
がなき姿です。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
自分は病床で
髀肉
(
ひにく
)
の嘆に堪えない。
キリスト教入門
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
なにがさて、
髀肉
(
ひにく
)
の
嘆
(
たん
)
をもらしながら、
伊那丸
(
いなまる
)
のゆるしがでぬため、いままでジッと
腕
(
うで
)
をさすっていた人々、
鎖
(
くさり
)
をとかれた
獅子
(
しし
)
のような
勢
(
いきお
)
いだ。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし、夜が
更
(
ふ
)
けて行くと、多摩川の流れの音が、
冴
(
さ
)
えて聞えるだけで、別段、お化けも出なければ、幽霊も現われず、あたら英雄も
髀肉
(
ひにく
)
の
嘆
(
たん
)
に堪えない有様です。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そう慰めながらも、一面には、自分の本質のうちに、なお慰めきれない
髀肉
(
ひにく
)
の
嘆
(
たん
)
が常にあるらしく見られる彼であった。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
師匠に見込まれて伊東の後をついだのだが、腕もあるし、頭もよい、学問も出来る、なかなか今の時勢に雌伏して町道場を守っていられる人間でない、
髀肉
(
ひにく
)
の歎に堪えられずにいるところへ
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
貧しい郷軍を興して、無位無官をさげすまれながら、流戦幾年、そのあげくはまた僻地に埋もれて、
髀肉
(
ひにく
)
を嘆じていたこと実に久しかった彼である。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
龍太郎
(
りゅうたろう
)
しかり、
小文治
(
こぶんじ
)
しかり、
蔦之助
(
つたのすけ
)
も
忍剣
(
にんけん
)
も、
髀肉
(
ひにく
)
の
嘆
(
たん
)
をもらしながら、四本の
鎖
(
くさり
)
でとめられた四
疋
(
ひき
)
の
豹
(
ひょう
)
のような
眼光
(
がんこう
)
をそろえて
両肱
(
りょうひじ
)
を
張
(
は
)
っている。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
心ばかりな酒宴となって、
酌
(
く
)
みかわす杯のあいだに、人々はどよめき合った。年久しく用いなかった
髀肉
(
ひにく
)
は
疼
(
うず
)
き、淵に
潜
(
ひそ
)
んでただ鍛えるのみだった腕は鳴った。
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
このところ
髀肉
(
ひにく
)
の
嘆
(
たん
)
にたえないのは張飛であった。常に
錦甲
(
きんこう
)
を身に飾って、玄徳や孔明のそばに立ち、お行儀のよい並び大名としているには適しない彼であった。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それを、思いがけない
蹉跌
(
さてつ
)
で聞きながしている愚連隊たちは、いかにも
髀肉
(
ひにく
)
を
嘆
(
たん
)
じるように振り
顧
(
かえ
)
って
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なさず、
髀肉
(
ひにく
)
の
嘆
(
たん
)
をかこちいたり、明日、みずから出でて、思うさま戦い、まず黄忠を生捕って見しょう
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「変事があったら、すぐ駈けて来て、門をたたけ。うちの
懸
(
かか
)
り
人
(
ゅうど
)
どのは、そういう折を待ってござるが、出会わないので、毎日、
髀肉
(
ひにく
)
の
嘆
(
たん
)
をもらしているくらいだ」
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
また、御領主なる者があるゆえに、
可惜
(
あたら
)
、頭上の風雲も、むなしく見過して、
髀肉
(
ひにく
)
を嘆じている
輩
(
やから
)
です
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、
髀肉
(
ひにく
)
を
嘆
(
たん
)
じて、兄にも人にも洩らしているほど、武勇にかけても、人に
負
(
おく
)
れぬ自信はあった。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
拙者
(
せっしゃ
)
には武力はありますが名はありませぬ。それゆえ、
今日
(
こんにち
)
まで
髀肉
(
ひにく
)
の
歎
(
たん
)
をもっておりましたが、若君のみ
旗
(
はた
)
さえおかしくださるならば、
織田
(
おだ
)
や
徳川
(
とくがわ
)
は
鎧袖
(
がいしゅう
)
の一
触
(
しょく
)
です。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そうだろう。
蜀
(
しょく
)
の
劉備
(
りゅうび
)
ではないが、信長の
髀肉
(
ひにく
)
もすこし
肥
(
こ
)
えたからの」
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ただ
髀肉
(
ひにく
)
の
嘆
(
たん
)
にたえないのは、この場合にきて拙者の
左腕
(
うで
)
だ」
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
髀肉
(
ひにく
)
の
嘆
(
たん
)
——ということばがあるな。知っておるじゃろう」
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かれらは、藤蔵が
退
(
さ
)
がるのを見て、
髀肉
(
ひにく
)
をうずかせ
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
髀肉
(
ひにく
)
の嘆
死んだ千鳥
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
髀
漢検1級
部首:⾻
18画
肉
常用漢字
小2
部首:⾁
6画
“髀”で始まる語句
髀
髀臼