ゑさ)” の例文
折角きづき上げた大身代を、をひや養女や、赤の他人に、熊鷹くまたかゑさうばはれるやうに滅茶々々にされて了ふのが心外でたまらなかつたのです。
いや、事によつたらどこかの図書館としよかんにたつた一冊残つた儘、無残な紙魚しぎよゑさとなつて、文字もじさへ読めないやうに破れ果ててゐるかも知れない。しかし——
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それみんなまへがさうおもふからで、あの、すゞめだつてゑさつて、ひろつてるのをて、うれしさうだとおもへばうれしさうだし、頬白ほゝじろがおぢさんにさゝれたときかなしいこゑだとおもつてれば
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
何時も醜い恐ろしい口は大抵堅くとざされてゐる。釣などする時には、年少者のやうに、いろいろの事を富之助に教はつて、釣にゑさをつけ、絲を水に投げる。そしてぼんやり考へ込む。
少年の死 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
ある日近侍きんじの小姓がゑさを呉れようとする時、隙をねらつて鸚哥は籠の外へ飛び出した。
そなたこそ人を釣るにほひゑさ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
そんな話が、意地の惡いことにあつしの耳へ入るぢやありませんか。遺言状をゑさにして、あの色娘が何をやり出すかわかつたものぢやない
やうなものがくぢらゑさにありますか、とりかねないいきほひで。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わたしの釣鈎つりばりゑさらない
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ゑさをたづねに來たのやら。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
解つたのはそれ丈け、其邊中を搜して見ると、小判が一枚小粒が二つ三つ落散つてゐましたが、それが多分三次の命を奪つたゑさの殘りでせう。
ゑさが無いのでじいつと
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
その時、これも口惜しまぎれに遺言状を握つて行つたが、後でそれが彌八をおびき寄せるゑさになつた。お富に取つては、彌八も憎いがお糸も憎い。
きめてお前の話の相手になつてやらう。華魁の話でも蔭間かげまの話でも、夜が明けるまで續けてくれ。明神下の藪つ蚊は飛んだゑさにあり付いて、大喜びだとよ
自分もまだ朝のゑさにもありつかない癖に、さう言つた親分の心意氣が嬉しくてたまらない八五郎です。
ゑさが良いんですよ、親分。あつしに逃げられちや大變といふので、朝つから岡持が入る景氣で」
それもらちが明かないと見て、近頃は毒矢どくやを飛ばしたり、娘お小夜の美色をゑさに、毒湯をすゝめて一擧にうらみを報じようとしましたが、奉行の朝倉石見守いはみのかみが老中に進言して
「エライ、圖星ですよ、親分。新造も年増も、お天氣も鰻の匂ひも皆んな親分を誘ひ出すゑさだ」
「千里の虎も大分増長したやうだ、そのうちに自分から進んでゑさに付くよ、放つて置くが宜い」
不老長壽の藥は、しん始皇しくわう以來の、馬鹿を釣るためのゑさで、それを賣出して、二三年の間に巨萬の富を積んだ百壽園壽齋は、この上もない利口な釣師だつたに違ひありません。
「誰かが、わざと寶搜しの中へ小判を投げ込んで、次のもよほしのゑさにしたとは思はないか」
飛んで、忍び返しに引つ掛るわけはねえ。それに江島屋には、揚羽あげはのお艶といふ、若い男をフラフラにさせる、結構なゑさがゐるんだ。戀患ひの講中を、片つ端から洗つて見るが宜い
あれは、ゑさをやつて居る白鼠は、夜になると腹ごなしに車を廻す、根氣の良い生物いきものだ。
年々美しくなる燕女は、一緒に住んでゐる權八には、たまらないゑさだつたに違ひない。
「あれ、今度は泣き落しと來たのか。金儲けがゑさぢや俺は不精になるばかりだが、八に泣かれちや、そつぽを向いて居るわけにも行くまい、——一體どこの國にでつかい金山があるんだ」
十三屋とみやへ乘込んでお曾與そよの死體を見せて貰つたが——親分、良い心持のものぢやないね、あのが達者なときはたまにからかつても見たが、駒次郎といふ大きなゑさに喰ひ付いてゐるせゐか
母娘二人の世帶などは、全く銀之助に取つては申分ないゑさだつたことでせう。
この事件ばかりは、ガラツ八も繪解きをして貰ふ世話がありませんが、平次はゑさり損ねたたかのやうな自尊心で、拔け荷の一味を縛つた大手柄を人に褒められるのをひどく嫌つて居りました。
脅かしかも分らないが、幸ひ三百兩のゑさがあるから、用人の禿頭を前にして、奧まで響くやうに、精一杯の大聲で立て讀み一席やりましたよ。あれだけ張り上げれば、大川の向うへだつて聞えまさア。
「怒るな、八、斯うゑさに付いて來れば占めたものだ」