鞦韆ぶらんこ)” の例文
芝生の綺麗な傾斜に添って、白い砂利道を行くと、噴水のある滝の前に赤いポストがあり、鞦韆ぶらんこに外国の子供が乗かってゐました。
絵にそへて (新字旧仮名) / 原民喜(著)
鞦韆ぶらんこに四、五人子供が集まって騒いでいる。ふり返って見ると動物園の門に田舎者らしい老人と小僧と見えるのが立って掛札を見ている。
根岸庵を訪う記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
天井からは幾つかの鞦韆ぶらんこがブラ下がり、衝立ついたて、小机、竹馬、大小の箱、むち、それに何に使うか見当も付かないものが舞台裏一パイに並べてあり
道路から二段目のほかほかした日あたりに、足を鞦韆ぶらんこのように下げている弟のそばへ行き、そして肩の上に手を置いた。
童話 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
が、鞦韆ぶらんこに乗って、瓢箪ぶっくりこ、なぞは何でもない。時とすると、塀の上に、いまむつまじく二羽ついばんでいたと思う。その一羽が、忽然こつねんとして姿を隠す。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自動車にも乗ろう。園遊会にも行こう。浪花節なにわぶしも聞こう。女優の鞦韆ぶらんこも下からのぞこう。沙翁劇さおうげきも見よう。洋楽入りの長唄ながうたも聞こう。頼まれれば小説も書こう。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
では鞦韆ぶらんこの索を投げましょうか、あすこに大きな樹があるから、それを結えましょうか、牆からあの樹を
断橋奇聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
プラウツスの書いた鞦韆ぶらんこはエトアール凱旋門がいせんもんの気球の下に現われている。アプレイウスが出会ったペシルの剣食い芸人はポン・ヌーフ橋の上の刃み芸人である。
少し行くと二対の鞦韆ぶらんこ! 女中さんが子供を乗せている。若い楓と若い桜、日光に肌をあぶっている。
奥さんの家出 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
また私の家の広い芝生で一緒に鞦韆ぶらんこに乗ったり、夾竹桃きょうちくとうの花の咲いた下で、共に楽しく語り合ったり、外に兄妹のない私は、自分の妹のようにフロールと親しんでいた。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
それを無理に紫繻子が引張るので、そのたびに、つかまっている柱がしなって、テント張りの小屋全体が、大風の様にゆれ、アセチリン瓦斯ガスつりランプが、鞦韆ぶらんこの様に動いた。
踊る一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
庁舎を出て、用もないまま町の公園をぶらついたすえ、子供らの騒いでいる鞦韆ぶらんこのある遊び場までくると、そこの一隅に荷を下ろしていた、うすぎたない饅頭屋まんじゅうやの小男が
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——せん鞦韆ぶらんこしに来ていたんでしょう? 僕、何だかよくない性質がありそうな気がしたもんだから——姉さん、どう思う? 上目で人を視るなんか、陰性で、僕嫌いさ」
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
また機巧あり、ベルトがた尾長猴はいかにこんがらがった鎖をも手迅てばやく解き戻し、あるいは旨く鞦韆ぶらんこを御して遠い物を手に取り、また己れを愛撫するに乗じてその持ち物をった。
明神みょうじん華表とりいから右にはいって、溝板どぶいたみ鳴らす細い小路を通って、駄菓子屋のかどを左に、それから少し行くと、向こうに大きな二階造りの建物と鞦韆ぶらんこや木馬のある運動場が見えた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
途中の焦燥もどかしさは、まるで際涯はてしもない旅をしている気持であった。畑や村が車窓まどをかすめて後へ後へと消え、沿道の電線は、鞦韆ぶらんこからでも眺めるように、目まぐるしく高まったりちこんだりした。
情状酌量 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
鬼ごっこや繩飛なわとび、遊動木に鞦韆ぶらんこなど他愛なく遊んでいるうちに、銀子がさっきから仲間をはずれ、木蔭こかげのロハ台に、真蒼まっさおな顔をして坐っているのに気がつき、春次も福太郎もあわてて寄って来た。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
鞦韆ぶらんこのように往ったり戻ったりすること。
張子の球にも鞦韆ぶらんこにも、手を組んで乗った源吉が、今でも親身の弟のように思えてならなかったのです。
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
二階造りの大きな建物で、木馬と金棒と鞦韆ぶらんことがあった。運動場には小倉こくら詰襟つめえりの洋服を着た寄宿舎にいる生徒がところどころにちらほら歩いているばかり、どの教室もしんとしていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
陳はその庭を通って小さなちんそばへ往った。そこに鞦韆ぶらんこたながあったが、それは雲と同じ高さのもので、そのなわはひっそりと垂れていた。陳はそこで此所ここ閨閣おおおくに近い所ではないかと思った。
西湖主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
鞦韆ぶらんここしらえておんなさい。」
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もう派手はでな舞臺着の振袖を着て、萠黄緞子もえぎどんすはかまを着けて居りましたが、御用の聲を聞くと、側に置いた小道具の一刀を取るより早く、舞臺の上に掛け連ねた、鞦韆ぶらんこ、綱
萌黄緞子もえぎどんすはかまを着けておりましたが、御用の声を聞くと、側に置いた小道具の一刀を取るより早く、舞台の上に掛け連ねた、鞦韆ぶらんこ、綱、撞木しゅもくなどの間をましらのようにサッと昇りました。