金米糖こんぺいとう)” の例文
金米糖こんぺいとうの場合については理学士福島浩ふくしまひろし君がまだ学生時代の夏休みに理化学研究所へ来ていろいろ実験した結果が発表されている。
自然界の縞模様 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
お茶の相手をしたのは女房のお峯ですが、それは金米糖こんぺいとうか何かを一粒口に入れただけで、生菓子は食わなかったと自分で言っております。
「そしたらついでにどっかで金米糖こんぺいとうを見つけて、買って来て貰い度いね。この頃何だかああいう少年の頃の喰べものを、また喰べ度くなった」
蝙蝠 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
むやみに角度の多い金米糖こんぺいとうのような調子を得意になって出します。そうして聴手ききての心を粗暴にして威張ります。僕は昨日きのう京都から大阪へ来ました。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それを学生は外使そとづかいに使うことが出来た。白木綿の兵古帯へこおびに、小倉袴こくらばかま穿いた学生の買物は、大抵極まっている。所謂「羊羹ようかん」と「金米糖こんぺいとう」とである。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
「おい、ツェねずみ。お前んとこの戸棚とだなの穴から、金米糖こんぺいとうがばらばらこぼれているぜ。早く行ってひろいな。」
ツェねずみ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ところが、この博労ばくろう町の金米糖こんぺいとう屋の娘は余程馬鹿な娘で、相手もあろうにお前のものになってしまった。
勧善懲悪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
岩「それでは何か途中であが金米糖こんぺいとうでも上げましょう、じゃア明日あしたわしが板橋までお送り申しましょう」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
むしろ肥満長身の泰然たる風采ふうさいの人で、天狗連てんぐれん追討のはじめに近臣の眠りをさまさせるため金米糖こんぺいとうを席にまき、そんなことをして終夜戒厳したほどの貴公子に過ぎない
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
足袋たび屋が足袋だか手甲てっこうだかの裁型たちがた、それに屋号を大文字、掛物と称する砂糖製の菓子店は大きな金米糖こんぺいとうの形、いずれも屋根付きで店頭高く掲げられ、糸屋は生麻の長いバレン
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
丁度われわれが子供の頃食べた金米糖こんぺいとうを作る時、砂糖をとかした中へ芥子けしの実を入れて動かしていると、その芥子の実が芯となってそれに砂糖が附いて金米糖が生長するように
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
大抵の客は甘納豆あまなっとうとか金米糖こんぺいとうとかいうたぐいの干菓子ひがしをたずさえて来るので、それを半紙に乗せて盆の上に置き、ご退屈でございましょうからと云って、土産のしるしに差出すのである。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
階下した老婆としよりが、渋茶を汲んできて、金米糖こんぺいとうをすすめて、障子をしめ、のろい跫音あしおと梯子段はしごだんに消して、それから裏の方で、干衣ほしものをしまいながら息子を呼んでいる声が聞こえてからも、まだ
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金目かねめのものではあるまいけれども、紅糸べにいとで底をゆわえた手遊おもちゃ猪口ちょくや、金米糖こんぺいとうつぼ一つも、馬でき、駕籠かごかかえて、長い旅路を江戸から持って行ったと思えば、千代紙ちよがみの小箱に入った南京砂なんきんずな
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
主客の間には陶器の手爐てあぶりが二つ置かれて、菓子器には金米糖こんぺいとうが入れられてあった。主僧とは正反対に体格のがっしりした色の黒い細君がいで行った茶は冷たくなったままいろくにごっていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「そしたらついでにどつかで金米糖こんぺいとうを見つけて、買つて来てもらいね。この頃何だかああいふ少年の頃の喰べものを、また喰べ度くなつた」
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
金米糖こんぺいとうを作るときに何ゆえにあのようなつのが出るか。角の数が何で定まるか、これも未知の問題である。
物理学圏外の物理的現象 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
と見れば、豆板屋、金米糖こんぺいとう、ぶっ切りあめもガラスのふたの下にはいっており、その隣は鯛焼屋、尻尾しっぽまであんがはいっている焼きたてで、新聞紙に包んでも持てぬくらい熱い。
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「人間に文明のつのが生えて、金米糖こんぺいとうのようにいらいらするからさ」と迷亭君が答える。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この弟の方はことに幼くて、街道を通る旅の商人からお民が買ってあてがったおもちゃのかばん金米糖こんぺいとうを入れ、それをさげるのを楽しみにして行ったほどの年ごろであった。小さなひものついた足袋たび
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これについては前に鈴木清太郎すずきせいたろう君の研究がある。これもある点では金米糖こんぺいとうの問題と似た点もあり、またある点では「弾性的不安定」の問題とも関係しているように見える。
自然界の縞模様 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
当時R研究所での仕事に聯関して金米糖こんぺいとうの製法について色々知りたいと思っていたところへ、矢島理学士から、西鶴の『永代蔵』にその記事があるという注意を受けたので
西鶴と科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
二十余年の昔、いろいろこういう種類のことを考えていたころに、何よりもまずわが国に特有で子供の時からなじみの深い「金米糖こんぺいとう」というものの形が自分の興味を引いた。
自然界の縞模様 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ごちそうに出した金米糖こんぺいとうのつぼにお客様が手をさし込んだらどうしても抜けなくなったのでしかたなく壺をこわして見たら拳いっぱいに欲張って握り込んでいたという笑話がある。
映画雑感(Ⅲ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
たとえば本誌(科学)の当号に掲載された田口泖三郎たぐちりゅうざぶろう氏の「割れ目」の分布の問題、リヒテンベルク放電像の不思議な形態の問題、落下する液滴の分裂の問題、金米糖こんぺいとうつのの発生の問題
日常身辺の物理的諸問題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
金米糖こんぺいとうという菓子は今日ではちょっと普通の菓子屋駄菓子屋だがしやには見当たらない。
備忘録 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)