追払おっぱら)” の例文
旧字:追拂
金永生から追払おっぱらわれて、ぼんやりとして稻香村とうこうそん(菓子屋)の前まで来ると、店先にぶらさげてある一斗桝いっとます大の広告文字を見た。
端午節 (新字新仮名) / 魯迅(著)
「四十万円です」チャンは、こういうのは金持ではないから早く追払おっぱらうにかぎると思って、かんたんに返事をした。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
とかく人出入騒々しく、かたがた妨げに相成るから、われら承って片端から追払おっぱらうが、弱ったのはこの少年じゃ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
デカも昨春までは、其一人であったが、抜群の強猛きょうもう故に競走者を追払おっぱらって、押入婿おしいりむこになりましたのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それを犯人の足跡の鑑定だけさせられて追払おっぱらわれたんじゃ、鰻丼うなぎどんぶりの臭いだけを嗅がされたようなもんだ。
無系統虎列剌 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それをライオンときつねにたとえ、「ライオンにはわなの危険があるし、狐にはおおかみの危険がある。罠を発見するには狐でなければならず、狼を追払おっぱらうにはライオンでなければならぬ」
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
夫も到頭追払おっぱらいやッとの事で引上る運びに達しましたが、其引上る道々も検査官は藻西太郎を慰めようとしますけれど彼れこうべを垂れて深く考え込む様子で一言も返事しません
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
附帯条件として、小林を早く追払おっぱらう手段も必要になって来た。しかるにその小林は今にも吉川夫人が見えるような事を云いながら、自分の帰る気色けしきをどこにも現わさなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かまわずおけば当世時花はやらぬ恋の病になるは必定、如何どうにかして助けてやりたいが、ハテ難物じゃ、それともいっそ経帷子きょうかたびら吾家わがや出立しゅったつするようにならぬ内追払おっぱらおうか、さりとては忍び難し
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
遂に改心して、隠家かくれがを退散するというまでになり、また圖書が頼みに依って明晩竹ヶ崎の南山へ乗込んで同類を追払おっぱらって、この土地を洗い清めようという我が了簡から一部始終を詳しく話して
「とにかく、こっちへ通してよろしい。土産物を見た上で、話を聞くか、追払おっぱらうか、どっちかに決めよう」
世に、緋、紫、金襴きんらん緞子どんすよそおうて、伽藍がらんに処すること、高家諸侯こうけだいみょうの如く、あるいは仏菩薩ぶつぼさつの玄関番として、衆俗しゅうぞくを、受附で威張いばって追払おっぱらうようなのが少くない。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その癖、鑑定は鑑定だけで、事件の真相になんか触れさせないまま追払おっぱらわれる事が、極めて多いんだ。
無系統虎列剌 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ただし趙家のしきいだけはまたぐことが出来ない——何しろ様子がすこぶる変なので、どこでもきっと男が出て来て、蒼蝿うるさそうな顔付かおつきを見せ、まるで乞食こじき追払おっぱらうような体裁で
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
兄さんはもうちっとで、盤面をめちゃめちゃにき乱して、この魔物を追払おっぱらうところだったと云いました。何事も知らなかった私は、少し驚きながらも悪い事をしたと思いました。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
真実まことしやかに云ってお屋敷近辺へ置かんように追払おっぱらいましたので、お竹はどうも致方いたしかたがない、旧来馴染の出入町人の処へまいりましても、長く泊ってもられません、又一緒にまいった宗達も
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「フ——ン。俺が色男だもんだから、邪魔っけにして追払おっぱらいやがるんだな」
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
成程なッ御夥間おなかまですかい。はははは、うございましょうとも。まあ、お掛けなさいまし。何ね、愚図々々ぐずぐずいや今の口上で追払おっぱらいまさ。貴女がお嬢様でも、どうです、あれじゃいやとはいえますまい。」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「こん畜生。来やがったな。よしよし、おれが追払おっぱらってやる。お前達は二人共鼻の穴にこの綿を詰めてジッとしていろ。そうして、馬鹿共が居なくなったら、すぐに逃げられるように用意していろ」
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
媽々かかあ連を追払おっぱらってくれ、消してくれよ、妖術、魔術で。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)