うけ)” の例文
まず下々しもじもの者が御挨拶ごあいさつを申上ると、一々しとやかにおうけをなさる、その柔和でどこか悲しそうな眼付めつきは夏の夜の星とでもいいそうで
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
と云われ白翁堂は委細承知とうけをして寺をたちで、路々みち/\うして和尚があの事を早くもさとったろうと不思議に思いながら帰って来て
うけんや其中は母の看病かんびやうくすり何呉なにくれさだめて不自由ふじいうならんと此事のみ心にかゝ牢舍らうしやしたる我心を少しは汲譯くみわけはや現在ありのまゝに申上て此苦このくるしみをたすけられよと申を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
貴国王からの命令ではおうけをして善いか悪いか、政府にうかがわなければならぬということになった。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
しかしそれをおうけをするには、どうしても津軽家の方を辞せんではいられない。己は元禄以来重恩の主家しゅうけてて栄達をはかる気にはなられぬから、公儀の方を辞するつもりだ。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
どんなヤクザな仕事でもうける。二昔前の書生劇でも大入り満員だというので、劇も映画も明治の壮士芝居である。職人芸人の良心などは糞喰くそくらえ、影もとどめぬ。文化の破局、地獄である。
芸道地に堕つ (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
転がった者は町役人にうけ手形を入れさして、たわらを解いてゆるしてやった。
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
むことをずおうけせり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うけたれば最早もはや初瀬留には逢事あふこともならず所詮生てはぢをかゝんよりはと覺悟かくごきはめし事なりと一伍一什いちぶしじふを物語れば五八は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
難有ありがとうございます」と、りよはおうけをして、老女の部屋をすべり出た。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
觸出ふれだして天一坊は直樣敷臺より乘物のりものにて立出れば越前守は徒跣はだしにて門際もんぎはまで出て平伏す駕籠脇かごわきすこし戸を引ば天一坊は越前ゐるかと云に越前守ハツと御うけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
然れば無罪にして士分の取扱をも受くべき筈である。それを何故に流刑に処せられるか、その理由を承らぬうちは、たやすくおうけが出来難いと云うのである。目附は当惑の体で云った。不審はもっともである。
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)