とき)” の例文
あけて内より白木しらきはこ黒塗くろぬりの箱とを取出し伊賀亮がまへへ差出す時に伊賀亮は天一坊に默禮もくれいうや/\しくくだんはこひもとき中より御墨附おんすみつきと御短刀たんたうとを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
が、自分の髪を入髪いれげなしにときほぐして、その緋の袴と擦れ擦れに丈に余るってのは、あのおんなばかりだと云ったもんです。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日課として、源氏のみとときを教えている松琴尼は、文学には熱心なこの少女が、勉強の中途でこんな声を出したのは初めて見ることだったので
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ときほどけばさすがに梅は雪の中につぼみをふくみて春待かほなり、これ春の末なり。
兎も角も、お蔭さまで助かりますと、片肘かたひじに身を持たせて吸筒すいづつの紐をときにかかったが、ふッと中心を失って今は恩人の死骸の胸へ伏倒のめりかかった。如何にも死人しびとくさい匂がもうぷんと鼻に来る。
彼の感得せし水晶の珠数はかけて今なほ襟にあり、護身刀まもりがたなの袋の緒は常にとき右手めてに引着けたり、法華経八軸は暫らくも身辺を離れず、而して大凡悩大業獣に向ふこと莫逆ばくぎやくの朋友に対するが如し。
以て來ぬか氣のきかぬ奴等やつらだナニ其所にある夫なら早く草鞋わらんぢとき何ぜ洗足せんそくをせぬのだと清兵衞はうれまぎれに女共をしかちらして彼の是のと世話せわ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ときほどけばさすがに梅は雪の中につぼみをふくみて春待かほなり、これ春の末なり。
髪の薄い天窓あたま真俯向まうつむけにして、土瓶やら、茶碗やら、ときかけた風呂敷包、混雑ごったに職員のがちらばったが、その控えた前だけ整然として、硯箱すずりばこ右手めてへ引附け、一冊覚書らしいのをじっながめていたのが
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くんで差出すぼん手薄てうす貧家ひんか容體ありさま其の内に九助は草鞋わらぢひもときあしを洗ひて上にあがり先お里へも夫々それ/″\挨拶あいさつして久々ひさ/″\つもる話しをなす中にやがてお里が給仕きふじにて麥飯むぎめし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)