親御おやご)” の例文
御当人や親御おやごさんたちの御心持は後で聞くとしても君だけの心を聞きたいね。君は絶体的に大原君へ御令妹ごれいまいを遣る事には反対せんか。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「だってお前、よその子供をつれだして見知らぬ人にさらわれてしまったのだもの、文房具屋の親御おやごに対してすまんじゃないか」
少年探偵呉田博士と与一 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
と、お励ましなされながらも、親御おやごのお身なれば、胸のそこに、如何いかばかりこのたびのお旅先を、ご心配あそばしておらるるや知れませぬ。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宮野邊源次郎と云って旗下はたもとの次男だが、其奴そいつが悪人で、萩原新三郎さんを恋慕こいしたった娘の親御おやご飯島平左衞門という旗下の奥様づきで来た女中で
元々親御おやごさん達のお考えで、仲人に立った方は、私の方よりは、かえって先方の御本人を説きふせるのに骨が折れたほどだと申すのでございます。
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
數多あまたの人にまさりて、君の御覺おんおぼえ殊にめでたく、一族のほまれを雙の肩にになうて、家には其子を杖なる年老いたる親御おやごもありと聞く。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
「到頭あのお若けえ書生さんも、お亡くなりなせえやしたか? そりゃまあ、お気の毒なこんで……さぞ親御おやご様も、お嘆きでござらっしゃりましょう」
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
「宅にあるのを、みんな読ましておあげなさい。おすきなものを見せないなんて、わからない親御おやごさんだ。」
からずむかしをいはば三千ごく末流まつりうなりといふ、さらば旗下はたもと娘御むすめごにや、親御おやごなどもおはさぬか、一人ひとりみとはいたはしきことなりと、はやくもそのひと不憫ふびんになりぬ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
でも腹の中では若先生がいたらと思うこともあるに違えねえ……いったいが竜之助様という人が心得違えだ、たとえば勘当されたとて、たった一人の親御おやごじゃねえか
先殿様の御葬式おとむらいがすむと間もなく、源太夫様もつづいておくなりなすったので、世間では追腹などと申しますが、ほんとうは千之丞様の親御おやごたちが寄りあつまって詰腹つめばら
半七捕物帳:33 旅絵師 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その親御おやごたちの生計くらしのことまで見て上げたりしたもので、少しも一様ではありませんでした。
親御おやごさんが、その体では見込がないから廃嫡する、といわれた時、どうか少し待って下さい、必ず何か為遂しとげますから、と泣いてお頼みになり、江戸へ出て国学を専攷せんこうして
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
「それじゃ大したものだ。あんまりすぎるから親御おやごさんが承知しまいぜ。」
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
勇「そうでない、お日さまのおあがりになろうとする所で見るのがいので、貴方とは親御おやごの時分から別懇べっこんにした事だから」
御老年の親御おやごさんが御病気におなりなすった時は如何いかに食物の事へ無頓着むとんちゃくな御主人でも子の義務として御老人の食物を研究なさらなければなりますまい。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
行き届いた人とみえて、親御おやごさんが心配されているといけぬから、手紙をお書きなさい、わたしが明日小浜おばまから出しておいて上げましょうということですから
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
師匠はお前が相更あいかわらず家に来てくれるなら何より好都合だとのこと、私に取ってはなおさらのことですから、早速翌日から参る旨を答えますと、親御おやごたちの考えもあろうから
親御おやごさんの方へはいずれ詳しく手紙で申し送るとして、お前はきょうからここにいることにするがよろしい。別にさしつかえはないだろうね。ああ、そうか。よろしいよろしい。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いまお前が死んだら、親御おやごたちや妹さんはどうします。わたしもこれでは帰れない、帰ることは止めにします。真さん、泊って行きます、今宵は泊めてもらいましょう、ゆっくり打明けて相談を
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しばらく……清藏どんとやら暫くお待ち下さい、只今親御おやごの仰せられるところ、重々御尤ごもっともの次第で、御尊父御存生ごぞんしょうの時分からお約束の許嫁いいなずけの亭主あることを存ぜず
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ジーナもスパセニアももうしばらくいらっしゃい……もうちょっとと引き留めてみませんでしたが、そういうわけなら親御おやごさんも心配しておいでだろうから、お帰りになるのも已むを得ぬ。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
... ほかならぬ大原さんの親御おやごさんにおせ申すのですからあとでお気味の悪い事もありますまい」としきりに頼まれてお登和も拒みかね「それでは宅へ戻って兄に聞いて参りましょう。ある事はちょうど両組ふたくみ揃ったのがございますけれども」とひとりで家に帰り行く。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
親御おやごさまがそんなら約束でもした男があってそんな事を云うのだろうと、おこっても、一人のお嬢様で斬る事も出来ませんから、太い奴だ、そういう訳なら柳島にも置く事が出来ない
七年ぜんに佐久間町へ旅人宿りょじんやどひらきしおり、これ重二郎殿、きみ親御おやご助右衞門殿が尋ね来て、用心のため預けられた三千円の金を見るより、あゝ此の金があったなら我望わがのぞみの叶う事もあらんと
文「いえ貴君あなた親御おやごさまは」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)