見聞けんぶん)” の例文
それは、日本に伝へられる種々の物語に徴しても、また、大勢おほぜいの旅行家の見聞けんぶんした事実に徴しても、疑ふ余地はないといはなければならぬ。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
自分じぶんについてればわかる。そなた折角せっかく修行しゅぎょうめにここへ寄越よこされているのであるから、このさいできるだけ何彼なにか見聞けんぶんしてくがよいであろう……。
私はその旅での外のあらゆる見聞けんぶんや印象はほとんど忘れて、修道院のすべてに絶えず頭や胸を一杯にされてゐた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
是等に關する古物こぶつ遺跡に付いて見聞けんぶんを有せらるる諸君しよくん希くは報告のらうを悋まるる事勿れ。(完)
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
原武太夫はらぶだゆうが宝暦末年の劇壇をののしり、享保の芸風を追慕してまざりし『となり疝気せんき』または手柄岡持てがらのおかもちが壮時の見聞けんぶんを手記したる『あと昔物語むかしものがたり』等をひもときて年々の評判記と合せ読み
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私自身の見聞けんぶんで、正確なところをみんなに話しておきたいというだけの考えでやって来たんですが、塾長に何かとくべつのお考えがあれば、それもふくんでいて話すほうがいいと思いますが。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
……其方共儀そのほうどもぎ一途いちずニ御為ヲ存ジ可訴出うったえいずべく候ワバ、疑敷うたがわしく心附候おもむき虚実きょじつ不拘かかわらず見聞けんぶんおよビ候とおり有体ありてい訴出うったえいずベキ所、上モナクおそれ多キ儀ヲ、厚ク相聞あいきこエ候様取拵申立とりこしらえもうしたて候儀ハ、すべテ公儀ヲはばかラザル致方
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そんなわけで、わたくし通信つうしんは、おもわたくしがこちらの世界せかい引移ひきうつってからの経験けいけん……つまり幽界ゆうかい生活せいかつ修行しゅぎょう見聞けんぶん感想かんそうったような事柄ことがらちかられてたいのでございます。
そのために、日本で見聞けんぶんした種々の事件に対しても、それぞれ、彼れ自身の見解を下してゐる。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし前にもいつたやうに、その見聞けんぶんした事件に対する見解は、なかなかおもしろい。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
人間にんげんというものは案外あんがいかんじのにぶいもので、自分じぶんたましいからだからたり、はいったりすることにづかず、たましいのみで経験けいけんしたことを、あたかも肉体にくたいぐるみ実地じっち見聞けんぶんしたように勘違かんちがいして
「文壇に幅をかせてゐるのはやはり小説や戯曲である。短歌や俳句はいつになつてもつひに幅を利かせることは出来ない。」——僕の見聞けんぶんする所によれば、誰でもかう言ふことを信じてゐる。
変遷その他 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)