葬式とむらひ)” の例文
「あつたつて遠い身寄は音信不通で、附合つちやくれません。尤も長崎には亭主やどの弟が居ますが、お葬式とむらひに間に合ふわけはなし」
造船所の掛員は、葬式とむらひの帰りに、一度こんなお辞儀に出会でくはして以来このかた久し振の事なので、ひどく度胆を抜かれてしまつた。
成程なるほどそれうも御奇特ごきどくな事で、おまい葬式とむらひを出してれゝば誠に有難ありがたいね、ぢやア何分なにぶんたのまうしますよ、今にわたしきますが、早桶はやをけなにかの手当てあては。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
葬式とむらひをしたのは五ねんばかりまへで、お正月しやうぐわつもまださむ時分じぶんでした。松戸まつど陣前ぢんまへにゐる田村たむらといふ百姓家しやうやひとがお葬式とむらひをしてくれたんで御在ございますが……。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
途中、『母ちゃん、お葬式とむらひが通るよ。』と赤い羅紗の靴をはいた子が、家の中に駈け込んだのを、お葉は幕間まくあひから見てゐた。それは繁華な電車通りであった。
青白き夢 (新字旧仮名) / 素木しづ(著)
宮様のお葬式とむらひ、話は皆想像もつかぬ事許りなので、聞く人は唯もう目をみはつて、夜も昼もなく渦巻く火炎に包まれた様な、凄じい程な華やかさを漠然と頭脳あたまに描いて見るに過ぎなかつたが
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
この寺は葬式とむらひとぼし花蘇枋いつしか褪せて葉のこぞり出ぬ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
それから一ときあまり、葬式とむらひの手順もつかずに居る中から拔出して、亭主の彌助は番所にゐる見廻り同心に訴へ出ました。
それ貴方あなた段々だん/″\詮索あらつて見まするとわたしと少し内縁ひつかゝりやうに思はれます、仮令たとへ身寄みよりでないにもせよ功徳くどくため葬式とむらひだけはわたし引受ひきうけて出してやりたいとぞんじますが
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
道子みちこはふと松戸まつどてらはうむられた母親はゝおやことおもおこした。その当時たうじ小岩こいはさかはたらいてゐたゝめ、主人持しゆじんもち自由じいうがきかず、ひまもらつてやつと葬式とむらひつたばかり。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
どうぞあの、此處から葬式とむらひを出すやうに、親分さんから仰しやつて下さいませ、ね、親分さん
へえ、何人前なんにんまへ出るえ。長「何人前なんにんまへなんて葬式とむらひぢやアるまいし、菓子器くわしきへ乗せて一つよ。弥「たつた一つかア。長「がつ/\ふとはらを見られるは。弥「ぢやア腹掛はらがけをかけてきませう。 ...
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
御命日ごめいにちはいつごろです。お葬式とむらひ何年程前なんねんほどまへでした。」
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
「いやに落着いて居るぜ、親分。その上、お寺から、葬式とむらひを斷つて來たんだが——」
「お通夜だつて葬式とむらひだつて、その道は別で、へツ」