舌鼓したつゞみ)” の例文
舌鼓したつゞみを打ちながら、私も仙吉も旨そうに片端から残らず喰べてしまったが、白酒と豆炒とは変に塩からい味がした。
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
與吉よきち一箸ひとはしめては舌鼓したつゞみつてそのちひさなしろして、あたまうしろへひつゝけるほどらしておつぎのかほ凝然ぢつてはあまえたこゑたてわらふのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
先刻さつき肉汁スウプさじもつけないで残つてゐたので、代りに次の皿をおいて、前のはその儘下げて来た。そして料理部屋で舌鼓したつゞみを打ちながらこつそりそれを食べた。
中硝子なかがらす障子しやうじごしに中庭なかにはまつ姿すがたをかしと絹布けんぷ四布蒲團よのぶとんすつぽりと炬燵こたつうちあたゝかに、美人びじんしやく舌鼓したつゞみうつゝなく、かどはしたるひろひあれは何處いづこ小僧こそうどん雪中せつちゆうひと景物けいぶつおもしろし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大きな舌鼓したつゞみを一つ。
また味加減をつけるにも、例の口喧くちやかましい伯の事とてひとばい講釈はするが、舌は正直なもので、何でもしよつぱくさへして置けば恐悦して舌鼓したつゞみを打つてゐるといふ事だ。
「ところが、妙なもので、その徳川氏自身がいつの間にかそんな料理に舌鼓したつゞみを打つやうになつたものですから、段々精力が衰へてとうと自滅するやうな運命になりました。」
郵船会社の倫敦支店長根岸氏は、その日以来、毎日のやうに豆腐に舌鼓したつゞみを打つにつけて、風谷と同じやうに、何とかして英国人にこの珍味があぢははせたくなつて溜らなかつた。
何処の画家ゑかきでも墨汁すみの使ひ残しに難渋するもので、幾ら忠実だからと言つて、女房かないにそれを食べさす訳にもかないが、豆猿は好物だけに舌鼓したつゞみを打つてぺろりとそれを嘗め尽してしまふ。
舌鼓したつゞみを打ちながら、幾杯も立続たてつゞけにそれを煽飲あふりつける。
上人は舌鼓したつゞみを打ちながら濃茶を飲んだ。