繃帶ほうたい)” の例文
新字:繃帯
繃帶ほうたいかわいてれば五六にちてゝいてもいが、液汁みづすやうならば明日あすにもすぐるやうにと醫者いしやはいつたのであるが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
見ると成程床の上に起き直つて、頭から肩へ繃帶ほうたいだらけになつて居るのは、五十五といふにしては、ひどく若々しく元氣な男。
森羅萬象ものといふものを全く眞ツ白に引ツ包むで了ツてこそ美觀もあるけれども、これが山脈や屋根にまだらになツてゐたり、物の陰や家の背後うしろ繃帶ほうたいをしたやうに殘ツてゐては
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あたまからほゝ縱横たてよこ繃帶ほうたいけてる。片頬かたほゝらでも大面おほづらつらを、べつ一面ひとつかほよこ附着くツつけたやうに、だぶりとふくれて、咽喉のどしたまで垂下たれさがつて、はちれさうで、ぶよ/\して、わづかにと、はな
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
百姓ひやくしやうすべてはかれこゝろ推測すゐそくするほど鋭敏えいびんつてなかつた。かれ自棄やけわざ繃帶ほうたいいて數日間すうじつかんぶら/\とあそんでた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
掻卷を脱ぐと、繃帶ほうたいで包まれた丸い肩、寢卷の襟がくつろげて、紅色眞珠の首筋から胸へ、さすがに處女らしい美しさです。
手先てさき火傷やけど横頬よこほゝのやうな疼痛いたみ瘡痍きずもなかつたが醫者いしや其處そこにもざつと繃帶ほうたいをした。與吉よきちばかりして大袈裟おほげさ姿すがたつてかへつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
お菊は半元服の美しい眉をあげてつゝしみ深く床の上に起き直りました。肩から首へ繃帶ほうたいをしてをりますが、若々しさに張り切つた、いかにも良い嫁です。
左の眼から頬へかけて顏半分の繃帶ほうたいをして居るのが、鬱陶うつたうしく重々しい限りですが、それがこの中年増の内儀の美しさを、一層引立てると言つた、不思議な効果です。
宗吉はそれを聽いて、うな垂れて暫らく默つて居りましたが、やがて繃帶ほうたいだらけの顏を擧げると
父親玄龍の手で繃帶ほうたいしたまゝですが、傷は後ろから一と突き、拳上がりに心の臟を刺したらしく、手もとが狂つて傷口がさゝくれてゐる癖に、間違ひもなく娘の命を奪つた執拗しつあうさが
さすがは三千五百石をむ旗本だけに、氣が落ち着くと、自分で矢を拔き取り、有合せのきれを集めて、キリキリと繃帶ほうたいはしましたが、流るゝ血は、潮時と見えてなか/\止りません。
傳六の死骸は、殺された部屋の次の間に、傷口に繃帶ほうたいだけ卷いて移してありました。
大村兵庫はまだ左の眼に繃帶ほうたいをしたまゝ、脇息にもたれて平次の方を見やりました。
ツイ唇をついて出た言葉、頬の色は半面を包んだ繃帶ほうたいよりも白く見えます。
平次はお靜に言ひふくめて、腕に繃帶ほうたいをしたガラツ八と一緒に出かけました。
怪我をしたお雪は、繃帶ほうたいに埋まつて、姉のお淺に介抱されて居りました。
お信は滿面の繃帶ほうたいの中で、僅かに美しい眼を、動かします。
左孝の唇は繃帶ほうたいの中に僅かに動きます。