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筆蹟
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ひっせき
ふりがな文庫
“
筆蹟
(
ひっせき
)” の例文
星巌の室
紅蘭
(
こうらん
)
の書も、扇面や
屏風
(
びょうぶ
)
など数点を蔵していること、山陽の女弟子として名高い
江馬細香
(
えまさいこう
)
の
筆蹟
(
ひっせき
)
も幾
幅
(
ふく
)
かを所持していること
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
お
蕎麦
(
そば
)
屋の門口にれいの竹のお飾りが立っている。色紙に何か文字が見えた。私は立ちどまって読んだ。たどたどしい幼女の
筆蹟
(
ひっせき
)
である。
作家の手帖
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
尤
(
もっと
)
もその夜ふけ、家には速達が届いた。それには五郎造の
筆蹟
(
ひっせき
)
でもって、工事の都合で当分向うへ泊りこむから心配するなと書いてあった。
東京要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
工員に渡す月給袋の
捺印
(
なついん
)
とか、動員署へ提出する書類とか、そういう事務的な仕事に満足していることは、彼が書く特徴ある
筆蹟
(
ひっせき
)
にも
窺
(
うかが
)
われた。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
能筆と噂された佐次郎の
筆蹟
(
ひっせき
)
は全く見事なもので、新助の死体の下にあった、浅草紙の文句とは比較にもなりません。
銭形平次捕物控:057 死の矢文
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
水引の下に添えてある手紙の文字のあざやかな
筆蹟
(
ひっせき
)
が、すぐ伝八郎の眼をつよく射た。——急いで裏を返してみると
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かれは親達からあたへられた手本を机の上に置いて、いつもの暗い部屋で書き習つてゐたが、その
筆蹟
(
ひっせき
)
は子供とも思はれないほどに見事なものであつた。
梟娘の話
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私はすでに彼の
筆蹟
(
ひっせき
)
や南画が、彼の焼物よりさらに美しい旨を述べた。しかし恐らく彼の価値のうち一番躍動するのは、木米その人の性格であると思う。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
地蔵院の住職
森徹信
(
もりてっしん
)
は、
仔細
(
しさい
)
にその偶人を調べて見た。偶人の箱に古風な
筆蹟
(
ひっせき
)
で
小式部
(
こしきぶ
)
と書いてあった。
偶人物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
彼の山猫のような眼はすぐその手紙を見つけ、宛名の
筆蹟
(
ひっせき
)
を認め、それから受取人の
方
(
かた
)
の狼狽しておられるのを見てとり、その方の秘密を知ってしまったのですな。
盗まれた手紙
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
記録というのは、真赤な
革
(
かわ
)
表紙で
綴
(
と
)
じ
合
(
あわ
)
せた、二冊の
部厚
(
ぶあつ
)
な手紙の束であった。全体が同じ
筆蹟
(
ひっせき
)
、同じ署名で、
名宛人
(
なあてにん
)
も初めから終りまで例外なく同一人物であった。
悪霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
一葉の霊も来り遊ぶであろうという意味の菊池寛の文章が小島
政二郎
(
まさじろう
)
氏の
筆蹟
(
ひっせき
)
で刻まれてあった。
安い頭
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
時計の下の柱暦に小母さんとおぬいさんとの
筆蹟
(
ひっせき
)
がならんでいるのも——彼が最初にその家に英語を教えるのを断りに来た時に気がついたものだけに——なつかしかった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
きれいで、りっぱによく
肥
(
ふと
)
っていて、位人臣をきわめた
貫禄
(
かんろく
)
の見える男盛りと見えた。院はまだ若い源氏の君とお見えになるのであった。四つの
屏風
(
びょうぶ
)
には帝の御
筆蹟
(
ひっせき
)
が
貼
(
は
)
られてあった。
源氏物語:34 若菜(上)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
のみならずほんのちよつとしたメモのやうなものを見たことがありますが、その
筆蹟
(
ひっせき
)
もなかなか
几帳面
(
きちょうめん
)
で、これが小学も満足に出てゐない人の書いたものかと思はれるほど正しい字づかひでした。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
自分の学力は
某
(
ぼう
)
と同じであるが、自分の字は子供のときより
妙
(
みょう
)
に
褒
(
ほ
)
められたといって
筆蹟
(
ひっせき
)
を誇り、あるいは自分の
交際術
(
こうさいじゅつ
)
においては、彼らに比べられては困る、
硬骨
(
こうこつ
)
なる点においては彼らに負けぬ
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
しかも、二十三、四歳の青年とは思われないような老成な
筆蹟
(
ひっせき
)
で。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「これです。
此
(
こ
)
の
筆蹟
(
ひっせき
)
には覚えがあるでしょう。」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
万三郎の
筆蹟
(
ひっせき
)
であった。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
夫人の
筆蹟
(
ひっせき
)
はペン字であるが、字の略しかたにゴマカシがないのを見れば相当に習字の
稽古
(
けいこ
)
を積んだものに違いなく、女学校では能筆の方だったであろう。
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
なぜといって、その手帖にこまかく書きこんである文字は、たしかに彼の
筆蹟
(
ひっせき
)
だったのであるから。
脳の中の麗人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その風貌にも似ず
筆蹟
(
ひっせき
)
は美しい。歌もよく
詠
(
よ
)
む。彼の作歌は「風雅和歌集」にまで選ばれている。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ここで、新聞社へ送られたあの上手な
筆蹟
(
ひっせき
)
の至急投書が、十分このことを確証しているものだ。
マリー・ロジェエの怪事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
M・Tの
筆蹟
(
ひっせき
)
を真似て、妹の死ぬる日まで、手紙を書き、下手な和歌を、苦心してつくり、それから晩の六時には、こっそり塀の外へ出て、口笛吹こうと思っていたのです。
葉桜と魔笛
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ところで、ここに別に三千子の
筆蹟
(
ひっせき
)
があります。これと吸取紙の筆蹟と比べて見ますと、両方とも若い女らしい手で、よく似ていますが、ただこうして見たのでは本当のことが分らない。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
見ると四角な西洋封筒に、明かに夫の手とは違う
筆蹟
(
ひっせき
)
で、「浜屋旅館方、蒔岡幸子様、親展」と記してある。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「ちゃんとここに書いてある。この『通信部報告書』に。これは交川博士の
筆蹟
(
ひっせき
)
だ」
断層顔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
私はその時
序
(
ついで
)
に、静子から預っていた、例の脅迫状のなるべく意味の分らない様な部分を一枚丈け選び出して、それを本田に見せ、果して春泥の
筆蹟
(
ひっせき
)
かどうかを確めることを忘れなかった。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その
筆蹟
(
ひっせき
)
は明らかに神経の興奮をあらわしていた。
アッシャー家の崩壊
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
彼女は姉妹じゅうで最も
筆蹟
(
ひっせき
)
がすぐれていて、仮名書きを得意にし、文才にも
秀
(
ひい
)
でているところから、手紙を書くのをそんなに
億劫
(
おっくう
)
がらない方で、本家の姉のように下書きなどはせず
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
老番頭がさし出す宿帳には、なんだか
筆蹟
(
ひっせき
)
を隠したようなぎごちない字で
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
一通毎に
筆蹟
(
ひっせき
)
が違っていた。ひどく下手な乱暴な書体であった。差出局の消印もその度毎に違っていたし、封筒も用紙も最もありふれた安物で、全く差出人の所在をつきとめる手掛りがなかった。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
美しいお
家流
(
いえりゅう
)
の
筆蹟
(
ひっせき
)
であった。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「脅迫状が来てるとか云ったね。その
筆蹟
(
ひっせき
)
で見当がつくかも知れない」
五階の窓:01 合作の一(発端)
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
見覚えのある
筆蹟
(
ひっせき
)
だ。恩田の父親に違いない。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
“筆蹟”の意味
《名詞》
筆蹟(ひっせき ;「筆跡」に「同音の漢字による書きかえ」がなされる)
人が書いた文字の跡。また、その特徴。
(出典:Wiktionary)
筆
常用漢字
小3
部首:⽵
12画
蹟
漢検準1級
部首:⾜
18画
“筆蹟”で始まる語句
筆蹟学