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眼差
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まなざ
ふりがな文庫
“
眼差
(
まなざ
)” の例文
化粧をしないおせいの顔が
艶々
(
つやつや
)
と光つてみえる。富岡は、魂のない
空
(
うつろ
)
な
眼差
(
まなざ
)
しで、おせいのどつしりとした胸のあたりを見てゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
娘ながらいかんと言えば覚悟がありそうな、思い詰めた
眼差
(
まなざ
)
しを見て、主水は——何かこれには訳があろう、と考えたから
半化け又平
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それは全く右馬の頭の
眼差
(
まなざ
)
しにちがいなかった。何というひどい変り様であろう。生絹は
悪寒
(
おかん
)
を総身におぼえて震えた。
荻吹く歌
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
あの
眼差
(
まなざ
)
しもあの
微笑
(
びしょう
)
も、てんで見当らなかったけれど、それでいてこの新しい姿になっても、わたしにはやはり
素晴
(
すば
)
らしいお嬢さんと思われた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
わたしの指の間で、
空
(
くう
)
をつかむ。嘴を開く、細い舌がぴりぴりっと動く。すると、その
眼差
(
まなざ
)
しの中に、ホオマアのいわゆる、死の影が下りて来る。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
▼ もっと見る
彼女は恐怖と哀願と愛情の入れまじった
眼差
(
まなざ
)
しで彼を見つめた。彼の面影をなるべくしっかり記憶に刻みつけようと、まじまじと見つめるのだった。
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
ギャルソンに註文を
誂
(
あつら
)
えた後のむす子は画家らしい虚心で、批評的の
眼差
(
まなざ
)
しで、柱の柱頭に近いところに描いてある新古典派風の絵を見上げていた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私たちは『美しい熱情』の
證
(
しるし
)
と
解釋
(
かいしやく
)
した色々のやさしい
眼差
(
まなざ
)
しと吐息を不意に襲つて驚かしたつけ。そして世間は直ぐに、その發見を喜びましたのね。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
そうした時、私は物をいう必要がなかった。父は私の
眼差
(
まなざ
)
しから私の願いを知って、それをみたしてくれたから。
父
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
そんな思いをまでこめたお母さんの射るような
眼差
(
まなざ
)
しに、敏感な反応をしめして、十二の目はたじたじとなった。お母さんははっとして急いで笑顔を作ってみた。
赤いステッキ
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
さすがに
不憫
(
ふびん
)
ですが、鉛色に黒く焼けただれた顔面の中には、白味の勝った、いつも
睨
(
にら
)
むような
眼差
(
まなざ
)
し。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
切れこんだ細い
瞼
(
まぶた
)
のうえに、
鳶色
(
とびいろ
)
の瞳をすえていた。相手の胸にぶっつけた自分の言葉がどれだけ効果をあげたか——それを見究めようとする
眼差
(
まなざ
)
しになっていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
寒くないときでも、始終身体をふるわしていた。子供らしくない
皺
(
しわ
)
を
眉
(
まゆ
)
の間に刻んで、血の気のない薄い唇を妙にゆがめて、
疳
(
かん
)
のピリピリしているような
眼差
(
まなざ
)
しをしていた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
と小六は、お延が肩をすぼめて云う言葉を制して、凄い
眼差
(
まなざ
)
しを、廊下の跫音へ振り向けた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
花嫁の悲しげな
眼差
(
まなざ
)
し、あるいはイブセン、蒋介石、心中、保険魔、寺尾文子、荒木又右衛門、モラトリアム、……等といっしょに、荒縄でくくられ、トラックに積みこまれて
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
長面で頬がやつれていて
眉間
(
みけん
)
の中央に目立って大きい
黒子
(
ほくろ
)
がある。それが神々しく感ぜられる。唇にはいつも寂しい微笑を含ませ、
眼差
(
まなざ
)
しにはいつも異様な
閃
(
ひら
)
めきを見せている。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
そうして私はすれちがいざま、その老人の
焦点
(
しょうてん
)
を失ったような
空虚
(
うつろ
)
な
眼差
(
まなざ
)
しのうちに、彼の
可笑
(
おか
)
しいほどな
狼狽
(
ろうばい
)
と、私を気づまりにさせずにおかないような彼の
不機嫌
(
ふきげん
)
とを
見抜
(
みぬ
)
いた。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
訴えるような
眼差
(
まなざ
)
しを見ると、十次郎はツイ斯う言わなければなりませんでした。
踊る美人像
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
わたしの明るい
眼
(
め
)
と、わたしのたしかな
眼差
(
まなざ
)
しとを、考えてくれる者はありません! わたしのバラの花も、牧師の家の庭のバラの花とおなじように、ずんずん若枝をのばしていきました。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
不断に「新しい師」と「よりよい自分」の幻を追って、未知の世界への前進をつづける少年の憧憬と夢とにあふれた
眼差
(
まなざ
)
し。それは何という不遜さと共に、何という謙譲さを湛えていることだろう。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
それを恥じるような
眼差
(
まなざ
)
しを投げて、こそこそと犬は去った。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
そうして部屋の戸口へ来て、あどけない
眼差
(
まなざ
)
しで差し覗いた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あの
眼差
(
まなざ
)
し、あの微笑を忘れることは、終生とてもできまい、——今まで見たこともないあの姿、思いがけなく今日わたしの眼に映ったあの姿は
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
たまたま
閃
(
ひらめ
)
きかける青年の
眼差
(
まなざ
)
しに自分の眼がぶつかると、見つけられてはならないと、あわてて後方へ歩き返した。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そうした時、私は物を言う必要がなかった。父は私の
眼差
(
まなざ
)
しから私の願いを知って、それを
充
(
み
)
たしてくれたから。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
富岡は酔つた眼に、ゆき子の涙を浮べてぎらぎら光る
眼差
(
まなざ
)
しを見た。その眼の色のなかには、不思議な魔力があつた。女房の眼のなかにも、時々こんな光りがあつたと思つた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
かの女は
儚
(
はかな
)
い幻影に生ける意志を注ぎ込むような必死な
眼差
(
まなざ
)
しで、これ等の人々を見渡した。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その唇は相変らず謎めいた微笑を浮べ、眼は少し横合いから物問いたげに、考え深そうに、
優
(
やさ
)
しげにわたしを見まもっていた……あの別れた
瞬間
(
しゅんかん
)
とそっくりそのままの
眼差
(
まなざ
)
しだった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
加野はもう一度、ぴつたりゆき子に
躯
(
からだ
)
を寄せてみた。ゆき子はぎらぎら光つた
眼差
(
まなざ
)
しで、加野を見つめた。むれた雑草や、花の匂ひが夜気にこもつてゐる。時々、ちいつと草の茎が鳴つた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
そのあとのロマネスクの茶亭に腰掛けて真佐子は何を考えているか、常人にはほとんど見当のつかない
眼差
(
まなざ
)
しを
燻
(
くゆ
)
らして、寂しい冬の日の当る麻布の台をいつまでも眺めていた。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
眼
常用漢字
小5
部首:⽬
11画
差
常用漢字
小4
部首:⼯
10画
“眼”で始まる語句
眼
眼鏡
眼前
眼瞼
眼窩
眼球
眼眸
眼色
眼覚
眼力