目安めやす)” の例文
「朝鮮へ国替くにかへ仰せ付けられたく、一類眷属けんぞくこと/″\く引率して彼地へ渡り、直ちに大明だいみんに取って掛り、事果てぬ限りは帰国つかまつるまじき旨の目安めやす
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
席次を目安めやすに人をる今の習慣を利用しようと思えば、随分友達をうらやましがらせる位置に坐り込む機会もないではなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
是れへ差出せと申さるゝに本多家の留守居るすゐハツと答へて懷中くわいちうより取出し目安めやす方へ差出すを大岡殿の御覽に入目安方之を讀上る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
誰かを殺そうという目安めやすをつけたら、その相手の後の方に立って、合図に、右手をあげる。そしたら、子分が、その男を斬る。そんな話を聞いたよ。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
たとひそれはうそとしても、今日こんにちのやうに出たらめでは、五十版百版と云ふ広告を目安めやすに本を買つてゐる天下の読者は愚弄ぐろうされてゐるのも同じことである。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
象山は実に時勢を知るの俊傑たるに相違なし、彼が死後その遺筐いきょうに「政策目安めやす書」なるものあり、その条に曰く
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
どういう目安めやすで俺に白羽の矢を立てたのか、そういうことを考えることは、あまり愉快なことではなかった。
魚の餌 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
目安めやす十万と見せて、十三万も、さらに十五万も、怒濤のごとく次々に送って来るかもしれない。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとえ定役ていえき多寡たかを以て賞罰の目安めやすとなせしふうなれば、囚徒は何日いつまで入獄せしとて改化遷善せんぜんの道におもむかんこと思いもよらず、悪しき者は益〻悪に陥りて、専心取締りの甘心かんしんを迎え
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
家とか位置いちとかいうことを、たがいに目安めやすにせず、いわば人と人との結婚であったならば、自分の位置いち失望的しつぼうてき変遷へんせんがあったにしろ、ともにあいあわれんで、夫婦ふうふというものの情合じょうあいによって
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
現に今日にても士族の仲間なかまわたくしに集会すれば、その会の席順はもとの禄高または身分に従うというも、他に席順を定むべき目安めやすなければむを得ざることなれども、残夢ざんむいま醒覚せいかくせざる証拠なり。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
吾輩を目安めやすにして考えれば猫なで声ではない、なでられ声である——よろしい、とにかく人間は愚なものであるからでられ声で膝のそばへ寄って行くと
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
赤坂傳馬町二丁目長助店元麹町三丁目浪人藤崎道十郎後家願人みつ 其方儀願ひ出候目安めやす取調とりしらべる處事實じじつ相違さうゐ無之これなくかつ永年えいねんをつと無實むじつ罪科ざいくわあひしをなげかはしく心得貞節ていせつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すでに他人本位であるからには種類の選択分量の多少すべて他を目安めやすにして働かなければならない。要するに取捨興廃の権威共に自己の手中にはない事になる。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
進まれければ目安方めやすかたこゑ高々たか/″\と小普請組宮崎内記支配嘉川主税之助同人家來安間平左衞門と呼上よびあげる時各々一同に平伏へいふくやがて越前守殿目安めやす方に建部郷右衞門ばんすけ十郎兩人の口書をと申されければ目安方めやすかたこれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あるいはあっても標準を立て通すだけの強い猛烈な勇気を欠いているか、どっちかなのである。しかしながらインデペンデントの側の方は、自分に一種の目安めやすがある。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白い色と白墨の形とを切離すようなものでこの格段な白墨を目安めやすにして論ずると白い色をとれば形はなくなってしまいますし、またこの形をとれば白い色も消えてしまいます。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
金を目安めやすにして人物の価値をきめる訳には行かない
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)