たわ)” の例文
旧字:
「ナ、何? 壺の蓋をすてたと? 馬鹿者めッ! 棄てたとて、まだお庭にころがっておろう。早々そうそうに拾ってまいれ、たわけがッ!」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
てまえのそのたわけさ加減、——ああ、御無事を祈るに、お年紀としも分らぬ、貴辺の苗字だけでもうかがっておこうものを、——心着かぬことをした。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そんなことを思いつくというだけでもたわけたことである。鶴見はそれを知らぬではない。知ってなおかつ他愛もない狂想を追うているのである。
たわけた事を言いなさんな、ラザルスごとき頓知奇とんちきせがれが何で怖かろう、われらなどはあの家に二羽ある鶏を、昨夜一羽平らげ、只今また一羽頂戴ちょうだいまかり出るところだ
彼女は、今はもう眠りのことより他に何の思慮もなくたわけて脚どりも怪しい夫を目醒すために手をとつて、駈け回つた。彼女は、一枚で来た毛糸の上着を汗で滲ませた。
F村での春 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
何やらこう尻尾しっぽはねも失せたような生活、何やらこうたわけきった代物しろものだが、さりとて出て行きも逃げ出しもできないところは、癲狂院てんきょういんか監獄へぶち込まれたのにそっくりだ!
善「これ/\水司、あれほど云うに分らぬか、若い者を打擲ちょうちゃくして殺す気か、たわけた奴だ、左様なる事をすると武田へ云ってしくじらせるがうか、これ此の手を放さぬか/\」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
な、なにを、そちまでが、たわけたことを云うかっ。——佐殿とは、そも何者か、弁えてものを申せ。六波羅の罪人、配所の流人、そんなものに、この時政のむすめがれるか。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……いずれ大鳥と間違えて功名顔に射たのであろう世間にはたわけた奴がある。ワッハハハ
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たわけたことをいうな。われは信濃を出てから小見おみ合田あいだの合戦を初めとし、北国では礪並となみ、黒坂、塩坂、篠原、西国では福隆寺畷ふくりゅうじなわてささせまり、板倉城と攻めたが、一度たりとも敗けたことはない。
幕間まくあい売歩行うりあるく、売子の数の多き中に、物語の銀六とてたわけたる親仁おやじ交りたり。茶の運びもし、火鉢も持て来、下足の手伝もする事あり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何方いずかたでも、通俗驢を愚鈍の標識のようにいえど、いわゆるその愚は及ぶべからずで、わざとたわけた風をして見せ、人を笑わすような滑稽智に富む由、ウッドは言った。
たわけた事を云うな、武士たる者が女房を他人ひとに取られて刀の手前此のまゝでは済まされぬから、両人の居処いどころへ踏込み一刀に切って捨て、生首を引提ひっさげて御両親様へ家事不取締の申訳を
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
たわけた事。宿役人の立会しようなど、常の争いと思うて居くさるのか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何をたわけめ!」と北山はカラカラとばかり哄笑こうしょうした。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やや蓮葉はすは白脛しらはぎのこぼるるさえ、道きよめの雪の影を散らして、はだを守護する位が備わり、包ましやかなおおもてより、一層世のちりに遠ざかって、好色の河童のたわけた目にも、女の肉とは映るまい。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
重「馬鹿な、たわけた事を云うな、逢わせんと云えばじきに二階へ通るぞ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「これこれ弓之進、たわけたことを申すな!」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「えい、たわけめ! しっかりしろ!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たわけた事を!」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)