痛罵つうば)” の例文
巡礼の痛罵つうば そういう風で先生達は名高い〔霊場や〕ラマ達の巡礼をまして、ゲンパラ即ち今私の立止って居る所まで帰って来た。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
彼の逞ましい精神が腐敗せる社会に投げつけた烈しい痛罵つうば譴責けんせきの声が、当時の社会に震撼的しんかんてきな印象を与えたことは前に一言したが
在来の芝居に強い執着を持っている江戸以来の観客は、これを一種の邪道のように認めて、ある者は痛罵つうばした。ある者は冷笑した。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ここに於てか電火ひらめき、万雷はためき、人類に対する痛罵つうばあたか薬綫やくせんの爆発する如く、所謂いはゆる「不感無覚」の墻壁しようへきを破りをはんぬ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
抱一は好き嫌いのはげしい感情家であったが、紅葉が大嫌いで、談紅葉に及ぶごとに口を極めて痛罵つうばするので、その度毎たんび
ところが、少年は何をそんなに憤慨しているのか、わけもなく癇癪かんしゃく筋をふくらませて、おそろしくいけぞんざいな痛罵つうばを右門に浴びせかけました。
これは知識ある階級の人すら家具及び家内装飾等の日常芸術に対して、一向に無頓着である事を痛罵つうばしたものである。わが日本の社会においてもまた同様。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それから教室に於いては湯目ゆめ教授の独逸ドイツ語がひどく神経に障った。殊に教授は意地悪く余に読ませた。そうして常に下読を怠っていた余は両三度手ひどく痛罵つうばされた。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
へいを高くし門を固めて暖き夢にふけつて居るのを見ては、暗黒の空をにらんで皇天の不公平——ぢやない其の卑劣を痛罵つうばしたくなるンだ、ことに近来仙台阪の中腹に三菱の奴が
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
と、蒋欽、徐盛のともがらは、都督周瑜しゅうゆの面前で、その責めを問われ、さんざん痛罵つうばされていた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ブラドンが下宿を出る時、クロスレイ夫人が面とむかって痛罵つうばすると、彼は平然として答えた。
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
クリストフが嘲笑ちょうしょう痛罵つうばを浴びせていたものはことごとく、彼にとってはこの上もなく貴重なものだった。彼がことに好んでいたのは、自然に、最も因襲的な作品であった。
でなければ見事きわまる賢哲保身だ。それを粉飾せんが為の高踏廻避と、それを糊塗ことせんが為の詩禅一致だ。済世さいせい気魄きはくなど薬にしたくもない。俺は夢厳和尚の痛罵つうばを思いだす。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
女というものは、一体に夫に対しては常に彼の社会的地位が低いことを痛罵つうばするくせに、一旦いったん、ひと前へ出ると、その同じい夫の地位を本能的にとてつもなく自慢するものである。
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
随分容赦なく腹の底を見透かされて辛辣しんらつ痛罵つうばなどを浴びせられたに違いあるまい。
文壇昔ばなし (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これに反してイエスは、公の問題ではあくまで祭司学者たちを痛罵つうばし給うたが、私的には光風霽月せいげつ、己を滅ぼそうと陰謀する敵に対してすら何の含むところ怨むところもありません。
見よ子規子の議論はしばしば矛盾をきたし、標準しばしば動揺を招けり、始めおおい蓼太りょうたをあげ後たちまち蓼太を痛罵つうばし、前年は、歌は俳句の長きもの、俳句は歌の短きものとしてごうも差支なしと論じ
絶対的人格:正岡先生論 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
あまりの痛罵つうばに平次は呆気あっけに取られました。ツイ先刻さっきまでは、伊勢新の腰へダニのように喰い付いていた男です。死んで、もう一文にもならないとみると、この男の毒舌には全く遠慮がありません。
もっとも、君が痛罵つうばしたような態度を、平生僕がとっているとすれば
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
痛罵つうばと共に、姿は駕籠に消えた。——堀織部正は先の外国奉行である。二月前の去年十一月八日、疑問の憤死を遂げたために、流布憶説るふおくせつまちまちだった。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
幸田露伴先生宴会の愚劣なるを痛罵つうばし宴席の酒を以て鴆毒ちんどくなりと言はれしが世の人の心はまたさまざまなり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
お祭りの乞食芝居を痛罵つうばした阿母さんは、鬼ばばァとうたわれながら死んだ。清元の上手な徳さんもお玉さんも、不幸な母と同じ路をあゆんでゆくらしく思われた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
でなければ見事きはまる賢哲保身だ。それを粉飾せんが為の高踏廻避と、それを糊塗ことせんが為の詩禅一致だ。済世さいせい気魄きはくなど薬にしたくもない。俺は夢厳和尚の痛罵つうばを思ひだす。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
家成は、ヘイライどもを、痛罵つうばした。——なんで、新調の方を出したか。ひとこと、自分の耳に入れないのか。瑠璃子も瑠璃子である。いまは、あの姫までが、まるで叔父叔母をわすれている。
君の働きのなさを痛罵つうばするものだから、君も大きいこと言って、何か真顔で、きょうすぐお金がはいるあてがあるなんて、まっかな嘘ついて女房を喜ばせ、女房にうんと優しくされて家を出て、さて
春の盗賊 (新字新仮名) / 太宰治(著)
義郎君などは最も非度ひど痛罵つうばせられた方である。
竹乃里人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
しかし観劇中にむやみに騒ぎ立てて劇の進行を妨害し、あわせて他の多数の観客に迷惑をあたえるというのは、かの大向おおむこうの徒とえらぶところなき無作法の所行しょぎょうであると、さんざんに痛罵つうばした。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
袁紹はその後、田豊を呼びつけて、彼の消極的な意見を痛罵つうばした。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)