わづらひ)” の例文
かれは学校生活の時代から一種の読書家であつた。卒業ののちも、衣食のわづらひなしに、講読の利益を適意に収め得る身分みぶんほこりにしてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
だれだとおもふ、かゝあながわづらひでなけりや、小兒がきなんぞれちやねえ。う、やつこ思切おもひきつて飛込とびこめ。生命いのちがけで突入つツぺえれ! てめえにやあついたつて、ちやんにはぬるいや。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
思へば/\はつかむりき候。太守樣にも至極御氣張り被遊候御樣子も被伺申候。又此上御わづらひおもり候ては、誠にやみの世の中に罷成儀と、只身の置處を不知候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
に彼は日頃このわづらひを逃れん為に、努めてこの敵を避けてぞ過せし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
先々月晦日みそかより、太守樣俄に御病氣不一と通わづらひ、大小用さへ御床之内にて、御やすみも不成、先年の御煩の樣に相成模樣にて、至極御世話被成候儀に御座候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
それが曝露ばくろしたので、本人は無論解雇しなければならないが、ある事情からして、ほうつて置くと、支店長に迄多少のわづらひが及んでさうだつたから、其所そこで自分が責を引いて辞職を申した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彼等かれら複雜ふくざつ社會しやくわいわづらひたとともに、その社會しやくわい活動くわつどうから樣々さま/″\經驗けいけん直接ちよくせつれる機會きくわいを、自分じぶんふさいで仕舞しまつて、都會とくわいみながら、都會とくわい文明人ぶんめいじん特權とくけんてたやう結果けつくわ到着たうちやくした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)