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煙硝
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えんしょう
ふりがな文庫
“
煙硝
(
えんしょう
)” の例文
夜が明けると、相も変らず寄せ手の激しい攻撃が始まって、鉄炮の音、
煙硝
(
えんしょう
)
の匂、
法螺貝
(
ほらがい
)
、陣太鼓、
鬨
(
とき
)
の声などが一日つゞいていた。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その世界では
煙硝
(
えんしょう
)
の
臭
(
にお
)
いの中で、人が働いている。そうして赤いものに
滑
(
すべ
)
って、むやみに
転
(
ころ
)
ぶ。空では大きな音がどどんどどんと云う。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そのころは
煙硝
(
えんしょう
)
もない、ダイナマイトもないときでございましたから、アノ穴を掘ることは実に非常なことでございましたろう。
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
舞台では何か軍事劇の幕があいているところと見えて砲声と共に楽屋の裏まで
煙硝
(
えんしょう
)
の
匂
(
におい
)
が漂い、軍歌の声も聞えてくるのである。
勲章
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「鉄砲の音のようでした。驚いて音のした方へ飛んで行くと、川の方へ向いた部屋は
煙硝
(
えんしょう
)
の
匂
(
にお
)
いで、お仏壇の前には、旦那がこんな具合に」
銭形平次捕物控:297 花見の留守
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
それだけのことであった。別に爆発物の破裂しそうな
煙硝
(
えんしょう
)
の匂いもしなかったし、イペリット
瓦斯
(
ガス
)
の悪臭も感じられなかった。座中の或る者が
国際殺人団の崩壊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
身体は一旦、うつぶせに倒れ、斜面の反動で少し向きを変えた。
煙硝
(
えんしょう
)
の匂いがその時初めて宇治の嗅覚にのぼって来た。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
そうした冬枯の景色の間を、
背嚢
(
はいのう
)
の革や銃の油の匂、又は
煙硝
(
えんしょう
)
の匂などを嗅ぎながら、私達は一日中駈けずり廻った。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
打った奴があるそうだ。金さん、お前もそんなことになるといけねえから、わしの見ぬところで
煙硝
(
えんしょう
)
いじりは御免だよ
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
濛
(
もう
)
——と、
煙硝
(
えんしょう
)
くさい
弾
(
たま
)
けむりが、
釣瓶
(
つるべ
)
うちにはなす鉄砲の音ごとに、
櫓
(
やぐら
)
の上までまきあがってくる。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
身には揚心流小太刀の
奥義
(
おうぎ
)
があっても、何しろ対手の武器は飛び道具でしたから、叫びつつも京弥がたじろいでいるとき、再びぱッときな臭い
煙硝
(
えんしょう
)
の匂いが散るや一緒で
旗本退屈男:02 第二話 続旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「さあ野郎ども口火を切れ!」声に応じて
煙硝
(
えんしょう
)
の匂いがプンとどこからともなく匂って来た。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と思った時には、ブスッという
慄
(
ふる
)
え上る様な音がして、
煙硝
(
えんしょう
)
の
匂
(
におい
)
がパッと鼻をうった。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「それに、あの家から、ときどき
煙硝
(
えんしょう
)
の匂いがするそうですよ、隠し鉄砲は遠島だ。それだけでも何とかなりゃしませんか」
銭形平次捕物控:080 捕物仁義
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と、
鑿
(
のみ
)
を取り上げた。初さんと自分は
作事場
(
さくじば
)
を出る。ところへ
煙
(
けむ
)
が来た。
煙硝
(
えんしょう
)
の
臭
(
におい
)
が、眼へも鼻へも口へも
這入
(
はい
)
った。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そのあたりは、一面に
煙硝
(
えんしょう
)
の臭気はするが、火は消えてしまっている。外部からもなんら
闖入
(
ちんにゅう
)
の気色はない。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そしておのおの
黒衣素足
(
こくいすあし
)
、手に
牙剣
(
がけん
)
をひっさげ旗を捧げ、腰には
葫芦
(
ころ
)
をかけて内に
硫黄
(
いおう
)
煙硝
(
えんしょう
)
をつめこみ、山陰にかくれていて、郭淮の部下がわが王平軍を追いちらし
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
胸をふさぐような
煙硝
(
えんしょう
)
の臭い、叫び声をあげて
擦
(
す
)
り
脱
(
ぬ
)
ける砲弾、悪魔が大口を開いたような砲弾の炸裂、
甲板
(
かんぱん
)
に飛び散る真紅な鮮血と
肉塊
(
にくかい
)
、白煙を長く残して海中に墜落してゆく飛行機
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ぷんと
煙硝
(
えんしょう
)
口火の匂いが風に送られて参りましたのでハッと驚き目を
鋭
(
そば
)
めじっと向こうを眺めましたところ、あろうことかあるまいことか、右衛門殿の
佇
(
たたず
)
みいる大岩の
裾
(
すそ
)
に地雷火を伏せ
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「フン、まだ
煙硝
(
えんしょう
)
の
匂
(
におい
)
が残っている」
火縄銃
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「傷口の具合や
煙硝
(
えんしょう
)
の匂いなどから、佐渡屋の主人は鉄砲で撃たれたらしいんだ。隣に住んでいるお前に、それがわからなかった筈はあるまい」
銭形平次捕物控:297 花見の留守
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それは油か、
煙硝
(
えんしょう
)
かの助けがなければ、到底こんなに早く火が廻るはずがないと思われたほど早かったと、その場に居合わせたもののように言う者さえある。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「ありがとう、ありがとう。だが、おじさん——じゃあない可児さま。あなたも早くここを
降
(
お
)
りて、どこかへ逃げださないと、もうそろそろ
煙硝
(
えんしょう
)
の山が
爆発
(
ばくはつ
)
しますよ」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ほう、この花は、非常に
煙硝
(
えんしょう
)
くさい。おや、それに、なめてみると、
塩辛
(
しおから
)
いぞ、海水に浸っていたんだ。すると、この花は、船の上にあった花ではない、海の中にあった花だ。これは、ふしぎだ」
爆薬の花籠
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「川の中からだって撃てるよ。尤も船から撃てば、
煙硝
(
えんしょう
)
の煙は川へ散って、家の中までは大して匂わないだろうが」
銭形平次捕物控:297 花見の留守
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
谷のうちには数条の
塹壕
(
ざんごう
)
を掘り、
寨
(
さい
)
の諸所には柴を積み、
硫黄
(
いおう
)
煙硝
(
えんしょう
)
を彼方此方にかくし、地雷を埋め、火を引く薬線は谷のうちから四山の上まで縦横に張りめぐらして
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その上に三輪の神杉へも鉄砲の
煙硝
(
えんしょう
)
を振りまいて火をつけるよ、そうして薬屋の者も丹後守の奴めも、殺せるだけ殺して、わしはその火の中で焼け死ぬのだ、いいかい——
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
先頭に立てて来た一団の爆火船隊——
煙硝
(
えんしょう
)
、油、柴などの危険物を腹いっぱい積んで
油幕
(
ゆまく
)
をもっておおい隠してきた快速艇や兵船は——いちどに巨大な火焔を盛って、どっと
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
化かしても化かし
甲斐
(
かい
)
がないものと狐にまで見限られたか、それとも、彼等には大の禁物な飛道具や、
煙硝
(
えんしょう
)
の臭いで寄りつかぬものか、絶えて今まで
悪戯
(
いたずら
)
らしい形跡も見えなかったが
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
火縄が、チラと
関金
(
せきがね
)
の
煙硝
(
えんしょう
)
へ口火を点じかけた。——と、間髪を
容
(
い
)
れなかったのである。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「これは
十津川
(
とつがわ
)
でやられた。京都から引返して来るときに、伊賀の上野で天誅組の壮士というのに
捉
(
つか
)
まり、それと一緒になって十津川へ後戻り、山の中で
煙硝
(
えんしょう
)
の煙に吹かれてこうなってしまった」
大菩薩峠:08 白根山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
煙硝
(
えんしょう
)
くさい煙は、うすい霧のように、伊織の背を越えて行った。——その彼方の樹、武蔵の横にある樹、また、道の行くて、道の
後方
(
うしろ
)
——すべての物の陰には、槍の穂か、刃かが、
潜
(
ひそ
)
んでいた。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ええ、
煙硝
(
えんしょう
)
の煙で、お目を悪くしてしまったのだそうですよ」
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「これは
煙硝
(
えんしょう
)
で焼かれたのです」
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
“煙硝(
硝石
)”の解説
硝石(しょうせき、nitre、niter、saltpeter)は、硝酸塩鉱物の一種。化学組成は(硝酸カリウム)、結晶系は斜方晶系。日本における古名は、消石、煙硝、焔硝、塩硝など。日本の歴史文献では「煙硝」や「焔硝」は硫黄や炭末を加えた黒色火薬を指すが、加賀藩では「塩硝」と呼ばれ五箇山産の硝石を意味するとされる。
(出典:Wikipedia)
煙
常用漢字
中学
部首:⽕
13画
硝
常用漢字
中学
部首:⽯
12画
“煙硝”で始まる語句
煙硝庫
煙硝蔵
煙硝箱
煙硝玉
煙硝番
煙硝臭
煙硝爆破
煙硝庫御番