もれ)” の例文
葭簀よしずを立掛けた水茶屋の床几しょうぎにはいたずら磨込すりこんだ真鍮しんちゅう茶釜ちゃがまにばかり梢をもれる初秋の薄日のきらきらと反射するのがいい知れず物淋ものさびしく見えた。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
或日優善は宴会を催して、前年に自分が供をした今戸橋の湊屋みなとやかかえ芸者をはじめとし、山谷堀で顔をった芸者をもれなく招いた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
とらへんとはかりしもの、これを見て水をくみきたりてあなに入るゝ、こほりたる雪の穴なればはやくは水ももれず、狐は尾をふるはして水にくるしむ。
外へ廻つて見ると、此の間のあらしの後で、屋根のもれを見た時の梯子が、その儘お勝手の横に掛けてあります。これも『此處から入りました』の證據の一つです。
街の混鬧こんどうのなかに紛れない色別をその姿に見出すとき、はっきりとその歩行や動作や、または女の家に這入ることや、そこの室内に於けるあらゆる細部の動作までを、もれなく
香爐を盗む (新字新仮名) / 室生犀星(著)
扨も赤川藤井の兩人は寶澤の吉兵衞に一味なしけるが此時このとき大膳だいぜんは兩人に向ひて我手下は今三十一人あれども下郎は口の善惡さがなき者なり萬一此一大事の手下の口よりもれんも計り難し我に一の謀計ぼうけいこそあれのちわざはひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
およそひと悪をなして天罰てんばつもれざる事、うをあみにもれざるがごとくなるゆゑ、これをたとへて天のあみといふめり。
月影のもれる小屋の中、一枚のむしろを分けて坐った兄妹きょうだいは、四万石の大名の倅にこう存分の事をいうのでした。
開き見るに古金こきん許多そくばくあり兵助大いに喜び縁者えんじや又はしたしき者へも深くかくおきけるが如何して此事のもれたりけん隣家りんか山口やまぐち郎右衞門ろゑもんが或日原田兵助方へ來りやゝ時候の挨拶あいさつをはりて四方山よもやまはなしうつりし時六郎右衞門兵助にむかひて貴殿には先達せんだつて古金のいりかめ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
○さて如件くだんのごとく条説でうせつするは、本編にいへる逃入村にごろむらの 神灵しんれいの事にちなみ実跡じつせきの書どもを摘要てきえうして御神の略伝りやくでん児曹こどもしめすなり。もとより不学ふがくのすさみなれば要跡えうせきもれたるもせつ誤謬あやまりたるもあるべし。
○さて如件くだんのごとく条説でうせつするは、本編にいへる逃入村にごろむらの 神灵しんれいの事にちなみ実跡じつせきの書どもを摘要てきえうして御神の略伝りやくでん児曹こどもしめすなり。もとより不学ふがくのすさみなれば要跡えうせきもれたるもせつ誤謬あやまりたるもあるべし。