だま)” の例文
それにめて、四、五人の侍臣が桟敷から飛び降りると、剣士だまりの幕からも、五、六人の若侍がバラバラと試合場の中央に駈けた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
胴の間の役人だまりに入って、板壁の釘にかかっていた送り帳を見ると、江戸を出るとき、この船にはたしかに二十三人の人間が乗っていた。
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ちやつちやの鳴いてゐる木立の間をくぐつて、どんどんのぼつていくと、頂の近くに日だまりのよいところがありました。
鳥右ヱ門諸国をめぐる (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
「どうしても彼奴らですよ。わっしの二階を足だまりにして奴らはそこらを荒して歩くつもりに相違ありませんぜ。早く何とかしなけりゃあなりますめえ」
半七捕物帳:04 湯屋の二階 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……城の大手の道普請ぶしんで、かれが人夫だまりの警護に立っていると、ふいにお浜館の忠秋が通りかかった、二人の小姓をれただけで、いつものとおり大股にさっさと歩いて来たから
足軽奉公 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
雪がもうくつのかゝと一杯でした。ところどころには吹きだまりが出来てやっとあるけるぐらゐでした。それでも一郎はずんずん進みました。楢夫もそのあしあとを一生けん命ついて行きました。
ひかりの素足 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
ここで研磨した人々の履歴を語るように、年月の古びと艶を出していて、戦時には、そのまま武者だまりとして使えるように広くもあった。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉の室まで来ないうちに、小姓だまりや廊下のほうで、何やら歓びあう声が沸いている様子に、心待ちに待っていた秀吉は
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武者だまりをのぞいて、若ざむらいたちへ、快活な声をかける。何か、冗談でもいったとみえる。若ざむらい達がさかんに笑う。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武者だまりの詰人を始め、要所の杉戸杉戸にいる控人も、ことごとく柴田の家来といってよいほど多くの外臣が入っていることもただの手助てつだいとは見えなかった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
櫓下の武者だまりに通ずる真っ暗な歩廊であった。ひとみをらすと、おいの慶次郎が、ひとりの武者をらっしていた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大広間だまりの供の者に持たせ置くことになっているので、作法どおり義道は召連れた近侍の手へ、万太郎は連れてきた相良金吾に、自身の脇差を預けて
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
例の武者だまりの道場から一町ほど離れている場所だった。四、五点の松火たいまつの明りがかたまっていたのですぐ分った。先に出て行った村田も出淵もそこにいた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、やがて播磨守が、侍だまりから呼び入れて来たのを見ると、それはまだ十二、三の愛くるしい少年だった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この一城をだに攻めおとせないようなことでは、祁山へ出た所で、魏の大軍にはてまい。陳倉道の北は街亭にあたる。この城を落して、味方の足だまりとなせ」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
傍らの武者だまりには、伊賀判官末貞いがのほうがんすえさだとか、周防元国すおうのもとくになどという人々が、市中警備の奉行となって、夜もあかあかと松明たいまつ篝火かがりびに冬の月をいぶしているのだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と考えてみたが、魚問屋の忙しい身だし、おそらくこんな上日和じょうびよりでは江の上か城外の市場だろう。また李逵ときては、賭場とばやら牢番だまりやら、いつも居る所さえわからぬ男だ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武者だまりも、狭間塀はざまべいの陰も、大玄関のひさしの下も、負傷者のうめき声でいっぱいになった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
重臣から武者だまりへ、それから下部の軽士たちへ——やがて洩れて来た内聞ないぶんによると
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、小姓だまりの年少者たちは、たとえ長政殿だろうが、誰だろうが、お人払いの中は、断じて取次はできない。それを、取次がぬなら押し通るぞ、などと威嚇いかくするのはしからぬ。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城外のからにあたる黒沢の裏谷に、黒沢衆とも青鷺衆ともよばれている外者そともの(藩外の雇傭人こようにん)の小屋だまりがある。近侍は、そこのたむろから二十五、六歳の小がらで固肥かたぶとりな男を呼び出した。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武者だまりの辺りから——また、水門口の方面からも、どっとここへ殺到した。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長政は、武者だまりの大床おおゆかをさして、自分の身も、大股に運んで行った。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右を見、左を見、次室の武者だまりの内へ、こうかんだかく呼びたてた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひたいの血を抑えながら、何濤かとうは刑事がしらの一室へ下がってきた。ふと見ると、黄昏たそがれかけた向う側の目明しだまりでは、連日の奔走で、草臥くたびれてはいるのだろうが、わいわいと馬鹿話に笑いどよめいている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「でも、柵門の番卒だまりで、みんながしゃべっていたんです」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
でんと、雨だまりの地へ、十之丞が投げつけられた時
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)