まん)” の例文
旧字:滿
ビイル一杯が長くて十五分間、その店のお客たる資格を作るものとすれば、一時間に対して飲めない口にもなお四杯のまんを引かねばならない。
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こちらもまんざら知らねえ仲でもなし、何か御挨拶の一つ位あつてもよからうと思ひまして、参つたわけでございます。
彦六大いに笑ふ (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
ビールのまんをひいて顔をテラテラ光らせていたモダンボーイの帆村とはことなり、もうすっかりシェファードのように敏感びんかんな帆村探偵になりきっていた。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
つかまんを持していた弦之丞の片肘かたひじ、ピクリッと脈を打ったかのごとく動いて、こうに躍ってきた影をすくうかとみれば、バッ——とさやを脱した離弦りげん太刀たち
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
更に麦酒ビイルまんを引きし蒲田は「血は大刀にしたたりてぬぐふにいとまあらざる」意気をげて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そう云う時には落着いた王生が、花磁盞かじさんを前にうっとりと、どこかの歌の声に聞き入っていると、陽気な趙生は酢蟹すがにを肴に、金華酒きんかしゅまんを引きながら、盛んに妓品ぎひんなぞを論じ立てるのである。
奇遇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そんな処でビールのまんを引いたりしているのは大抵稼ぎ人風の男である。
うそだうそだ。そらおとよさんはおれがあんまり稲刈りが弱いから、ないしょでけてくれたには相違ないけど、そりゃおとよさんの親切だよ。何も惚れたのどうのってい事はありゃしない。ばかまんめ何を
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
握り太な彫弓ちょうきゅうまんを引いて、びゅッとつるを切って放つ。その矢も見事、彼方の袍の心当むねあてを射抜いた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ビールのまんいて、大いに作戦を練るとするか」
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
くわッとはるかなまとを見、弦絃げんげん二つにって、キリッ、キリッと、しずかにまんをしぼりこんでゆく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城外にある味方の意志では、長政の返答次第で、きょうの日没前にも、小谷城の攻略はかたづけてしまおうという予定をもち、全軍、まんを引いて待機している際である。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いえいえ、まんしてうごかぬようす、敵の気ごみはすさまじゅう見うけられます」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いま天下信長公のぶながこうきのちは、西に秀吉ひでよし、東に徳川とくがわ北条ほうじょう北国ほっこく柴田しばた滝川たきがわ佐々さっさ、前田のともがらあって、たがいに、中原ちゅうげんねらうといえども、いずれもまんしてはなたぬ今日こんにち
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし麾下きかの軍団は、幾段、幾十隊か数も知れない。そしてそれぞれ金甲きんこう鉄鎗てっそう燦然さんぜんたる部将のもとにたてをならべ——ござんなれ烏合うごうの賊——と弩弓どきゅうまんして待ちかまえていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さあ、位階に従って席に着け。さらにさかずきまんを引こう」と、促した。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まんす——
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)