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すべ
ふりがな文庫
“
渾
(
すべ
)” の例文
この時魔の如き力は
喉
(
のんど
)
を
扼
(
やく
)
してその背を
捬
(
う
)
つ、人の死と生とは
渾
(
すべ
)
て彼が手中に在りて緊握せらる、欲するところとして得られざるは無し。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
然れども彼れは一党派の首領のみ、国民の
嚮導者
(
きやうだうしや
)
には非る也。何となれば、彼れは其一身に於て日本国民が要求する
渾
(
すべ
)
ての者を代表せざれば也。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
「要するに、三
界
(
がい
)
は
渾
(
すべ
)
てこれ一心ぢや、寒いといふ心、暑いといふ心、心頭を滅却すれば火もまた凉しぢや。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
この一冊は表紙に「㦣語、抽斎述」の五字が
篆文
(
てんぶん
)
で題してあって、首尾
渾
(
すべ
)
て抽斎の自筆である。
徳富蘇峰
(
とくとみそほう
)
さんの蔵本になっているのを、わたくしは借覧した。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
汝の
渾
(
すべ
)
ての感情に訴え喜怒哀楽の情かわるがわる起り汝をして少しも倦怠なからしむ、汝聖書を
楽読
(
らくどく
)
せよ。
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
▼ もっと見る
いにしへは此村
薔薇
(
さうび
)
に名あり。見渡す限り
紅
(
くれなゐ
)
の霞に
掩
(
おほ
)
はれたりし
由
(
よし
)
物に見えたれども、今は一株をだに留めず。身邊
渾
(
すべ
)
て是れ緑にして、其色遙に山嶽に
連
(
つらな
)
れり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
試掘
若
(
もしく
)
は採掘の事業、公益に害ある時は、農商務大臣は既に与へたる許可を取消すことを得とあり——然るに栃木県
下野
(
しもつけ
)
国上都賀郡足尾銅山より流出する
渾
(
すべ
)
ての鉱害は
政治の破産者・田中正造
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
霧は捲き去り捲き来って、天上山上
渾
(
すべ
)
ての有象を
一擲
(
いってき
)
して、宇宙の永劫に投じ去るかと思わせる。暫くして僅かのひまから鷲ヶ峰の雑木林が、直ぐ目の先に見えたが、
倏忽
(
しゅくこつ
)
に消え失せた。
女子霧ヶ峰登山記
(新字新仮名)
/
島木赤彦
(著)
イヤモウ人間は
一擲
(
いってき
)
千金
渾
(
すべ
)
て是れ胆ぢや。嚢中自ら銭有りといふこともあるがな。心配いたすな。大鈞は私力なく万理自ら森着すぢや。イヤ誰しもが黄白には悩みおるて。ワアッハッハッハッハ。
金談にからまる詩的要素の神秘性に就て
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
亡国の歌は残つて玉樹空し 美人の罪は麗花と同じ
紅鵑
(
こうけん
)
血は
灑
(
そそ
)
ぐ
春城
(
しゆんじよう
)
の雨 白蝶魂は寒し
秋塚
(
しゆうちよう
)
の風 死々生々
業
(
ごう
)
滅し難し 心々念々
恨
(
うらみ
)
何ぞ
窮
(
きわ
)
まらん 憐れむべし房総佳山水
渾
(
すべ
)
て魔雲障霧の中に落つ
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
万瓦渾如
レ
粧
二
水晶
一
万瓦
(
まんが
)
は
渾
(
すべ
)
て
水晶
(
すいしょう
)
を
粧
(
よそ
)
うが
如
(
ごと
)
し
礫川徜徉記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
渾
(
すべ
)
て
散
(
あら
)
けしめ
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
とにもかくにも今一目見ずば動かじと始に
念
(
おも
)
ひ、それは
愜
(
かな
)
はずなりてより、せめて
一筆
(
ひとふで
)
の
便
(
たより
)
聞かずばと更に念ひしに、事は心と
渾
(
すべ
)
て
違
(
たが
)
ひて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
人若し此世の
渾
(
すべ
)
ての物よりも愛すべく、此世の渾ての物を絶つも猶絶つ能はざるものを有すれば是れ信条を有する也。
信仰個条なかるべからず
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
彼の正気は時に鬱屈するといえども、明徳再び光を放つ時は、宇宙に存する
渾
(
すべ
)
ての善なるもの渾ての美なるものは彼の認むる所となるなり、偽善
諂媚
(
てんび
)
は彼の最も嫌悪する所なり
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
思の儘に
捷
(
か
)
ち給ひぬ、おん身も嬉しと思ひ給ふならん、千萬人の心は
渾
(
すべ
)
て君に奪はれたり、君は初め我がいかに君のために胸を跳らせ、後君の成功の
期
(
ご
)
するところに倍するに及びて
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
渾
(
すべ
)
てこの旅の間に、洋服の
勢力
(
せいりょく
)
あるを見しこと、幾度か知られず。
みちの記
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
我と彼との愛こそ
淤泥
(
おでい
)
の
中
(
うち
)
に輝く玉の如きものなれ、我はこの一つの穢れざるを
抱
(
いだ
)
きて、この世の
渾
(
すべ
)
て穢れたるを忘れん。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
我は辛く一席を
購
(
あがな
)
ふことを得き。いづれの
棧敷
(
さじき
)
にも客滿ちて、暑さは人を壓するやうなり。演劇はまだ始まらぬに、我身は熱せり。きのふけふの事、わがためには
渾
(
すべ
)
て夢の如くなりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
花鳥風月、
渾
(
すべ
)
て是れ自然が自己を
彰
(
あら
)
はすべき形式たるに過ぎざるを知る。彼れは物質と機関との排列として自然を見る能はず、大なる意味、不思議なる運行を遂ぐる者として之れを見る。
詩人論
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
彼は
渾
(
すべ
)
て柔和に渾て忠実なるに我は
幾度
(
いくたび
)
か厳酷にして不実なりしや、これを思えば余は地に恥じ天に恥じ、報ゆべきの彼は失せ、
免
(
ゆるし
)
を乞うの人はなく、余は悔い能わざるの後悔に
困
(
くるし
)
められ
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
此時に至るまで頼氏の通信は
渾
(
すべ
)
て関五郎が辨じてゐたのである。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
旧幕時代を慕つて明治の文明を
悪
(
にく
)
む時勢
後
(
おく
)
れの老人も、若しくは
算盤
(
そろばん
)
を携へて、開港場に奔走する商人も、市場、田舎、店舗、学校、
渾
(
すべ
)
ての光景は我眼前に
躍如
(
やくじよ
)
として恰も写真の如くに映ず。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
渾
漢検1級
部首:⽔
12画
“渾”を含む語句
渾身
渾沌
渾成
渾名
渾良夫
渾然
雄渾
渾力
渾天儀
渾心
渾融
渾厚
渾沌界
渾河
渾心的
渾汗
渾天
渾然融合
瑰麗雄渾
阿月渾子
...