清々せいせい)” の例文
「ああ、これて清々せいせいした。」と、お葉は酔醒よいざめの水を飲んだ。お清はあきれてその顔を眺めている処へ、のお杉ばばあの声が聞えたのである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
茶を熱く入れてかおりのよいところを御二人へ上げましたら、奥様も乾いた咽喉のどしめして、すこしは清々せいせいとなすったようでした。急に、表の方で
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「アア、やっと清々せいせいした。美しい景色じゃありませんか。あんな事件にかかわっている間、僕達はすっかりこういうものを忘れていましたね」
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「私何だかさっぱりして、気が清々せいせいして、もうどうなったって……この池にはまって死んじゃったって、構いませんわ。」
或る男の手記 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そして当惑した考えを無理にまとめようとしているらしい無邪気さが、清々せいせいした気もちを父親の胸に湧き立たせた。
みずうみ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
頭へにおいのする油を塗られて、景気のいい声をうしろから掛けられて、表へ出たときは、それでも清々せいせいした心持であった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
誰でも飢えた時かわいた時には食物や水がうまいものであろうが、その時の朝風は実にその食物や水よりもはるかに心持よく、自分は気が清々せいせいとして来た。
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
試験が済むと、早速咽喉のどへ指を突込んで留飲りゅういん黄水きみずと一緒に吐出せるものなら、吐出して了って清々せいせいしたくなる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ませたらドンナにか清々せいせいするだろうにナアとか……あんな役者と心中したらとか……いっその事ヴァンパイヤになってやろうか知らん……なぞと……。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
右左へくっ付けて置くことがあるもんか、とんだ清々せいせいして良い心持だ。嘘だと思ったら、手前も取払って見ねえ
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
花のかおり馥郁ふくいくとして、金坊きんぼう清々せいせいして、はツと我に返つた。あゝ、姉が居なければ、少くともわずらつたらう。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
少しも日本にだ帰りたく思いません。永く米国に居りたく思います。米国に参りまして気が清々せいせいとなりました。葛城が居りますから、何かと心強う御座います。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
石材屋と、最中もなか屋との間を抜けて谷中の墓地へ這入るとさすがに清々せいせいとした。寺と云う寺の庭には山茶花さざんかの花がさかりだし、並木の木もいい色に秋色をなしていた。
貸家探し (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「ばあやもこんなに気分が清々せいせいいたしたことはありませんでございますよ。ごいっしょにこうしておりますと、昨年伊香保にいた時のような心地こころもちがいたしますでございますよ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
して清々せいせいしたでしょうが、あれからわたしの身が、どういうふうに取扱われたか御存じ?
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「新築などしないから、奉仕はいらない。あれが焼けてくれたんで、清々せいせいしているんだ」
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
『やれやれ有難い』と私はほっとしました。万事上首尾に運んだので、胸が清々せいせいしました。ところが、ヷーシャが庭先を出て行くと、入れ違いにマーシェンカがやって来たのです。
女房ども (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ず頭取と支配人だけだろう。僕は田舎に育って、子供の時分植物や昆虫の興味を先生に吹込ふきこまれたが、久しぶりでこうしたところに住むと、樹や草を見るだけでも気が清々せいせいする。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
「……いい気味だ、あんなやつ。これで清々せいせいと、あしたの昼まで寝てられるわよ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「思い切って堪忍してやって御覧なさい。気分が清々せいせいしますよ」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それや、清々せいせいするわよ。
かんしやく玉 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
もうあんな恐ろしいものは居ないから、安心しよや。もうもう大丈夫だ。ゆうべは俺もよく寝られたし、御霊みたまさまは皆を守っていて下さるし、今朝は近頃にない気分が清々せいせいとした
ある女の生涯 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この間から日がながくッてしようがないのですから、おかあさまへ上げようと思ってしているのですけど——イイエ大丈夫ですわ、遊び遊びしてますから。ああ何だか気分が清々せいせいしたこと。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
無邪気で清々せいせいとした子供のような気分——かと思っていると、なにもかも見抜いて、すいを通しているようなところもあるし——あの目の見えない人を先生と呼んでいるが、何の先生だか
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
清々せいせいして宜いやな、——ところで、姐御に頼まれたものを二枚」
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
と言って退けたら、さぞ清々せいせいするだろうと考えていた。
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そして、やっとこれで清々せいせいしたという顔付だ。
接吻 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
無精ぶしょうを極めないで流し給え。清々せいせいするぜ」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「ああ、清々せいせいした」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その清々せいせいとした空気はお雪が吸ったことの無いようなものであった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「こんな清々せいせいしたことはないな、八」
やれやれ、おれもこれでき返ったというものだ。きょうは久しぶりで木曾の山猿やまざるに帰った。お前のおっかさん(お民)もあれで痔持ちだが、このおれの清々せいせいしたこころもちを分けてやりたいようだ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「どうだ、清々せいせいしたろう」
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「これで、まあ、漸く清々せいせいした」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)