海路かいろ)” の例文
母の手から貰つて横に糸でゆはへ附けてある鍵で箱の中をあけやうとするのであつたが、金具は通つて来た海路かいろの風の塩分で腐蝕して鍵が何方どつちへも廻らない。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ネープルスかうから海路かいろすう多島海たたうかいぎ、地中海ちちゆうかいり、ポートセツトにて石炭せきたんおよ飮料水ゐんりようすゐ補充ほじうして、それより水先案内みづさきあんないをとつてスエスの地峽ちけう
にしとしあきのはじめ、汽船きせん加能丸かのうまる百餘ひやくよ乘客じようかく搭載たふさいして、加州かしう金石かないはむかひて、越前ゑちぜん敦賀港つるがかうはつするや、一天いつてん麗朗うらゝか微風びふう船首せんしゆでて、海路かいろ平穩へいをんきはめたるにもかゝはらず
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「ぢや、兄さん——海路かいろ——といふのは如何かしら?」と慎ましやかに微笑した。
海路 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
見て水主等かこらに此處は何所いづこおきなるやと尋けるに水主等はしかとは分らねど多分たぶん兵庫ひやうごおきなるべしと答けるにぞ杢右衞門もくゑもんは吉兵衞にむかひ番頭樣貴所あなたの御運のよきゆゑにたつた二日二夜で海路かいろ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
上野うへの汽車きしや最後さいご停車場ステエシヨンたつすれば、碓氷峠うすひたうげ馬車ばしやられ、ふたゝ汽車きしやにて直江津なほえつたつし、海路かいろ一文字いちもんじ伏木ふしきいたれば、腕車わんしやせん富山とやまおもむき、四十物町あへものちやうとほけて、町盡まちはづれもりくゞらば
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)