氣障きざ)” の例文
新字:気障
「それぢや、ほんの一と丁場だ、——送つて上げるのも氣障きざだ。醉つ拂ひか何かにからみ付かれたら、大きな聲を出しなさるが宜い」
門を出て右へ曲ると、智惠子はちつと學校を振返つて見て、『氣障きざな男だ。』と心に言つた。故もない微笑がチラリと口元に漂ふ。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
石碑せきひちからだ==みぎけば燕州えんしうみち==とでもしてあるだらうとおもつてりや、陰陽界いんやうかい==は氣障きざだ。思出おもひだしても悚然ぞつとすら。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
甚だ氣障きざな申分ではあるが、久保田君の寫實主義を認めるのは、東京の人でなければ難かしいと思ふ。
「態度はあなたの趣味にははないとあなたは云つたと思ふけれど?——氣障きざ坊主臭ばうづくさいつて?」
其滿足そのまんぞくかほひと見下みさげるやうな樣子やうすかれんで同僚どうれうことばふか長靴ながぐつ此等これらみな氣障きざでならなかつたが、ことしやくさはるのは、かれ治療ちれうすること自分じぶんつとめとして、眞面目まじめ治療ちれうをしてゐるつもりなのが。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
氣障きざ奴等やつらの居ないとこ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
明神下の早春の朝陽は、まことに快適で、お長屋の風情は貧乏臭くとも、『大變ツ』などといふ氣障きざつぽいものの氣振けぶりもなかつたのです。
我知らず熱心になつて、時には自分の考へを言つても見るが、其麽時には、信吾は大袈裟に同感して見せる。歸つた後で考へてみると、男には矢張り氣障きざ厭味いやみな事が多い。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
殷鑑遠からず所謂鏡花會の人々の中などには鼻持ちもならぬ氣障きざ代物しろものが多いさうである。
貝殻追放:011 購書美談 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
すこ氣障きざだが、色氣いろけがあるのか、人事ひとごとながら、わたしぢた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「そんな氣障きざなんぢやありません。御存じでせうが、私の妹分のお玉、——あのが見えなくなつたのです」
無理解の周圍の中に生活する事は、吾々にとつて最も悲しい事であるが、「鳥のなげき」のうはついた氣障きざないひあらはしは、その悲しみを賣物にしてゐるやうな推察を起させる。
身振みぶりをして、時々とき/″\頬摺ほゝずり、はてさて氣障きざ下郎げらうであつた。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「そんな氣障きざなものには附き合ひませんよ。ぎよくも揚代も無しの、眉を落した華魁の顏を、マジマジ見るケエなんか、憚り乍らこちとらの好みには合ひやしません」
氣障きざやつだぜ。」
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「そんな氣障きざなんぢやありませんよ。金はふんだんにあるし、うまい物は腹一杯に食べてゐるし、女の子はうるさいほど付きまとふし、此樣子ぢやどうも身が保てねえ」
「親父の玄龍は氣障きざだが、殺された娘は評判ものでしたよ。氣輕で愛嬌があつて、色つぽくて——」
「そんな氣障きざなことは言やしません。綺麗なのは皮一重だが、あの内儀は心の底からの貞女だ」
「何を言やがる、『春ともなれば』も氣障きざだが、『人間の雌』は聽き捨てにならねえ臺詞せりふだ」
「そんな、氣障きざな話ぢやありませんよ。あつしはこの三日の間、金掘りに夢中だつたんで」
「百兩の褒美は氣障きざだが——二千兩の小判が消えてなくなるのは陽氣のせゐぢやあるめえ」
「へツ、へツ、へツ、そんなに氣障きざなんぢやありません。御用向きのことですよ」
「あんまり心掛けの良いのも氣障きざですね。兎も角、喜三郎の人氣は大變なもんですよ、近所ばかりでなく、神田、下谷、淺草へかけて、忠義酒屋と言へば知らないものはありやしません」
氣障きざなの、贅澤なの、つうがつたの、ノラクラ者らしいのを狙つて、煙草入を拔くか、財布をかすめるか、精一杯に二分や一兩の收入が山で、胴卷や紙入を拔いて、死ぬの生きるのと言つた
「ところで、その近づきの印に、氣障きざなやうだが、手を握らせてくれ」
「大丈夫ですよ、そんな氣障きざなものは振り向いても見やしません」
「そんな氣障きざなもんぢやありません、お濱が來ましたよ」
「そんな氣障きざな話ぢやありませんよ。ね、親分」
「あの歳で、緋縮緬ひぢりめんでないのが氣障きざですね」
「あツ、何をするのさ、氣障きざだね」
「そいつは氣障きざだね」
銭形平次捕物控:180 罠 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)