殿堂でんどう)” の例文
の人の作った戯曲の面白さが分らないとすれば、つみは自分の方にある。残念ながら、自分は藝術の殿堂でんどううかゞう資格がないのである。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
とひッ返した手下の者は、やがて、殿堂でんどうの広間へ、ふたりの武士をあんないしてきた。呂宋兵衛るそんべえは上段の席から鷹揚おうようにながめて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのために、当時、鮎川紅子あゆかわべにこと名乗っていた彼女は、愛の殿堂でんどうにまつりあげておいた婚約者の竹花中尉を、永遠にうしなってしまったのだった。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この不思議ふしぎ殿堂でんどううちには、いろいろのうおたちが、おもしろおかしく、ちょうど人間にんげんうえ生活せいかつするときのように、棲息せいそくしていたのであります。
なまずとあざみの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この高山かうざんは、風景ふうけいきわめてうるはしく、吾等われらたつしたるいたゞきは、三方さんぽう巖石がんせき削立せうりつして、自然しぜん殿堂でんどうかたちをなし、かゝる紀念塔きねんたふつるには恰好かつこう地形ちけいだから、つひ此處こゝ鐵車てつしやとゞめた。
しかしながらそのようなたか殿堂でんどう近寄ちかよることや堂上どうじようのぼることは年齡ねんれい無關係むかんけいなことであるから、わが讀者どくしやたま/\かような場所ばしよ居合ゐあはせたとき大地震だいぢしん出會であふようなことがないともかぎらぬ。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
夜もすがら、百八ヵ所できあかしているかがり火のため、人穴城ひとあなじょう殿堂でんどうは、さながら、地獄じごくの祭のように赤い。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれらには、このうつくしい殿堂でんどうが、自分じぶんたちのためにつくられたのではないかとおもわれたほどでした。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さてこそ、ものにおどろかぬはず、しかし有名なる果心居士かしんこじ弟子でしが、富士ふじ殿堂でんどうと知らずに、くるわけがない、なんのご用か、あらためて聞こうではないか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)