)” の例文
却々なかなか大きな犬らしい足跡だから、人間が四つん這いになって、犬の足をしたかたで、こんな跡をつけたと考えることは不可能ではない。
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
男女服裝の別 土偶の用未だ詳ならざれば、其したる物は男子のみの形か女子のみの形か、男女兩樣か明かに云ふ能はず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
この相似は、誰をしたとか、学んだとか、そんな狭小な問題ではなく、もっと文化史的な考え方から観たほうが、素直に明瞭にわかる気がする。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
友達はあとでその時母が自分を叱った言葉だと言って母の調子を真似てその言葉を自分にきかせた。それは母の声そっくりと言いたいほど上手にしてあった。
泥濘 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
小堀遠州が建築指揮にあたったといわれる華蔵寺は京都の清水寺をしてつくったといわれ、本堂から長い渡り縁をつたわって一段下った書院風の客室へはいると
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
「まず、だいたいにおいて、この寛永の御造営をして、これにしたがってゆこうではござらぬか」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
話す事は始めからきまつてゐて、話す順序は其時の様次第だから、決して心配にはならなかつたが、たゞ成る可く穏かに自分の思ふ事が向ふに徹する様にしたかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
例えば『永代蔵』では前記の金餅糖こんぺいとうの製法、蘇枋染すおうぞめ本紅染ほんもみぞめする法、弱ったたいを活かす法などがあり、『織留』には懐炉かいろ灰の製法、鯛の焼物の速成法、雷除かみなりよけの方法など
西鶴と科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
清元きよもとの一派が他流のすべからざる曲調きよくてう美麗びれいたくした一節いつせつである。長吉ちやうきち無論むろん太夫たいふさんが首と身体からだ伸上のびあがらしてうたつたほど上手じやうずに、かつまたそんな大きな声でうたつたのではない。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
にはいけこひを、大小だいせうはかつてねらひにくるが、かけさへすれば、すぐにかゝる。また、同國どうこくで、特産とくさんとして諸國しよこくくわする、鮎釣あゆつりの、あの蚊針かばりは、すごいほど彩色さいしきたくみ昆蟲こんちうしてつくる。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
またつるぎゆきともゑといふようなものをしてあるのも發見はつけんされます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
清元きよもとの一派が他流のすべからざる曲調きょくちょうの美麗を托した一節いっせつである。長吉は無論太夫たゆうさんが首と身体からだ伸上のびあがらして唄ったほど上手に、かつまたそんな大きな声で唄ったのではない。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
尊氏、直義の行列は、すべて、建久元年に行われた源頼朝の大仏供養をしている。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
全く西洋の絵にある悪魔デヸルしたもので、念の為め、そばにちやんとデヸルと仮名が振つてある。表は三四郎の宛名のしたに、迷へる子とちいさくいた許である。三四郎は迷へる子の何者かをすぐ悟つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)