)” の例文
わづかに六畳と二畳とに過ぎない部屋は三面の鏡、二脚の椅子、芝居の衣裳、かつら、小道具、それから青れた沢山たくさん花環はなわとでうづまつて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
僕は彼の言葉の通り、弘法麦こうぼうむぎれになった砂の中へ片手を差しこんで見た。するとそこには太陽の熱がまだかすかに残っていた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
たゞ四角よつかどなるつじ夜警やけいのあたりに、ちら/\とえるのも、うられつゝも散殘ちりのこつた百日紅ひやくじつこう四五輪しごりんに、可恐おそろし夕立雲ゆふだちくもくづれかゝつたさまである。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それでその後この研究室の研究はいつの間にか立ちれの姿になってしまった。ノーベル賞受賞者のリチャードソンもこの一系の研究ではついに大した収穫しゅうかくには到達しなかった。
実験室の記憶 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
うられた茂みへもぐり込む。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
下枝しづえは 人取りらし
窓の中には尼が一人、破れたむしろをまとひながら、病人らしい女を介抱してゐた。女は夕ぐれの薄明りにも、無気味な程れてゐるらしかつた。
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
途次みちすがらきこえた鬼門關きもんくわんぎようとして、不案内ふあんないみち踏迷ふみまよつて、やつ辿着たどりついたのが古廟こべうで、べろんとひたひ禿げた大王だいわうが、正面しやうめんくちくわつけてござる、うらたゞひと
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
故人の大理石像の前に「シエキスピアの家より」としてユウゴオの今年の誕生日に英国から贈つて来た花環はなわが青れたまゝ捧げられて居た。文豪の旧宅がたがひに贈答をする習慣も奥ゆかしい。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
上枝ほつえは 鳥居らし