昼日中ひるひなか)” の例文
旧字:晝日中
伊「昼日中ひるひなか二人で出てはいけない、今夜の仕舞汽車で間にあうように、そして横浜まで落延びておいて、明朝あす一緒にこう」
「ばかなことを言いたまえッ、女情にょじょうにおぼれている啓之助のめかけなどを、誰が仲間ちゅうげんと一緒になって、この昼日中ひるひなか、両刀を差すものが追い廻していられるものか」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昼日中ひるひなかが太古のような静かさで、お雪は自分一人がこの温泉にいるような、いい気持になってしまいました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「なんぼ女同士やかて昼日中ひるひなか若い女が裸になったりして、お前らまるで気違い沙汰ざたやな。」「うちあんたのようにコンヴェンションにとらわれてえへんよってなあ。 ...
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
群集の中の一青年の主張する所によると、昼日中ひるひなか人形の脚を持って、煙突を昇った奴があると云うのだ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この昼日中ひるひなか、この英国で、列車が空中に消えて無くなろうとは! 実に辻褄の合わない話ではないか。
今まで何事も控目に仕て居た恭吉は主人が居ない様な時には昼日中ひるひなかあたり介わずにお関に小使をねだったり何と云っても仕事を仕ずにゴロンとなって講談本か何かを
お久美さんと其の周囲 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「でも変ですね。痣蟹はあの恐ろしい横顔を知られずに、どうして昼日中ひるひなか歩いていられたのでしょう」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「おお与一か。昼日中ひるひなかから門をてて……慌てるな与一……ヤヤッ、何か斬ったナ……」
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
近所きんじょでもよくつていることですが、老人ろうじんはかなりへんくつな人物じんぶつです。ひどく用心ようじんぶかくて、昼日中ひるひなかでも、もん内側うちがわしまりがしてあり、門柱もんちゅう呼鈴よびりんさないと、もんをあけてくれません。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
うち晩酌ばんしゃくに飲み、村の集会で飲み、有権者だけに衆議院議員の選挙せんきょ振舞ぶるまいで飲み、どうやらすると昼日中ひるひなかおかずばあさんの小店こみせで一人で飲んで真赤まっか上機嫌じょうきげんになって、笑って無暗むやみにお辞義をしたり
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
よくまあ、昼日中ひるひなか、その面をさげて大江戸の真中が歩けたもんだ、口惜くやしいと思ったら、親許おやもとへ持ち込むんだね、親許へ持ち込んで、雑作ぞうさくをし直してもらって出直すんだ
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
昼日中ひるひなか堂々と押しかけて、相手の鉄砲がわしを狙っているその前で、物を盗む。力ずくの戦いだ。盗むのではない。力ずくで奪うのだ。サア、けちな盗人、ここへ来い。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
何でも新宿の専売局跡の露店ろてん街において、昼日中ひるひなかのことだが、ゴム靴などを並べて売っている店に一つの赤革の鞄が置いてあったが、この鞄がどうしたはずみか、ゆらゆらと持上って
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
被害者ひがいしゃ刈谷音吉老人かりやおときちろうじんは、もと高利貸こうりかしでへんくつで、昼日中ひるひなかでももんしまりをしていて、よびりんをさないと、ひと門内もんないとおさなかつたというほどに用心ようじんぶかく、それに妻子さいしはなく女中じょちゅうもおかず
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
ところが、意外なことは、その最中に、山野夫人が又しても例の異様な男の誘いに応じ、二度目の密会をとげるために、今度は大胆にも昼日中ひるひなか家をそとにしたことであった。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
冗談じょうだんじゃありません、昼日中ひるひなか、提灯をつけて宇治山田の町を歩けるもんですか」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「変ですね。昼日中ひるひなか、あの男が御宅へ忍込んでいるなんて、何かの思違いじゃありませんか」
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私は根岸御行の松のほとりに、一軒の古めかしい土蔵つきの家を借り受け、留守は近所の駄菓子屋のおばあさんに頼んで置いて、静子としめし合せては、多くは昼日中ひるひなか、そこへ落合ったのである。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
霊魂は昼日中ひるひなかにぎやかな町の中を歩くことだって出来るんじゃないか
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
といって昼日中ひるひなか、それを取りはずすことは出来ません。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)