うから)” の例文
うからに持ちながら、人に奪らるゝことやある! いで、取り返して、わが妻にせむ! 一圖に思ひ切つては、鐵壁も避けぬ盛遠。
袈裟の良人 (旧字旧仮名) / 菊池寛(著)
妃は髪黒くたけ低く、褐いろの御衣おんぞあまり見映えせぬかわりには、声音こわねいとやさしく、「おん身はフランスのえきに功ありしそれがしがうからなりや」
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
姫は我手をりて、我面を打目守うちまもり、その事をば館の人々まだ一たびも我に告げざりき、さては我うからの御身に負ふ所はいと大いなりと宣給ひぬ。
かくて恐ろしき閾の上よりいふ、あゝ天を逐はれし者等よ、卑しきうからよ、汝等のやどす慢心はいづこよりぞ 九一—九三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
大日下の王は大命を受けたまはずて、おのが妹や、ひとうから下席したむしろにならむといひて、大刀の手上たがみとりしば
そしてそういうふうに死んだ者は山男山女の類のうからのなかにゆくといわれている。
東奥異聞 (新字新仮名) / 佐々木喜善(著)
男と常陸の妻のうからと、——彼等は京へはひる途中、日がらの悪いのを避ける為に、三四日粟津あはづに滞在した。それから京へはひる時も、昼の人目に立たないやうに、わざと日の暮を選ぶ事にした。
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
我がうからすでに一人はいさぎよしくわうくわうと空に散りつつ消えぬ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
それゆえにわれらのうからは苦しみとなやみとに堪える堅き心をもつ
ひろびろと野陣のぢん立てたり萱草は遠つ代よりの大うからにて
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
近きうからにて、山の医師くすしとして知られたり。
各自のうからの祭を営み得るわけがない。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
しかしここの年のはじめは何の晴れがましいこともなく、またうから女子おなごたちは奥深く住んでいて、出入りすることがまれなので、にぎわしいこともない。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
こを殺しつとて、咎めらるゝことあらば、いかにすべき。客。そは心安かれ。あるじの老女おうなも聞きしことあるべきが、われはボルゲエゼのうからなり。媼。
我には世に、名をアラージヤといふひとりのめひあり、わがうからの惡に染まずばその氣質こゝろばへはよし 一四二—一四四
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
大津山おほつさんここの御宮の見わたしをうからがものと我等すずしむ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
逞しき女等おみなら、ネエレウスのたけきうから
逃ぐる者をば龍となりて追ひ、齒や財布を見する者にはこひつじのごとく柔和おとなしきかの僭越のうから 一一五—一一七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
人の噂を聞くに、この貴人はボルゲエゼのうからにて、アルバノとフラスカアチとの間に、大なる別墅べつしよかまへ、そこのそのにはめづらしき草花を植ゑてたのしみとせりとなり。
これへ参ったのは、石浦の山椒大夫がうからのものじゃ。大夫が使うやっこの一人が、この山に逃げ込んだのを
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
天竜の水上みなかみ清み雪祭るうからが鬼はよに遊びける
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あまうからよ。11680
わが家もこの国にて聞ゆるうからなるに、いま勢いある国務大臣ファブリイス伯とはかさなるよしみあり。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
わが家もこの国にて聞ゆるうからなるに、いま勢ある国務大臣ファブリイス伯とはかさなるよしみあり。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「されどこの一件ひとくだりのことはファブリイス夫人こころに秘めてうからにだに知らせ玉はず、女官の闕員けついんあればしばしのつとめにとて呼寄せ、陛下へいかのおんのぞみもだしがたしとて遂にとどめられぬ。」
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「されどこの一件ひとくだりのことはファブリイス夫人こころに秘めてうからにだに知らせたまわず、女官の闕員けついんあればしばしの務めにとて呼び寄せ、陛下のおん望みもだしがたしとてついにとどめられぬ」
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
妃は髪黒くたけ低く、かちいろの御衣おんぞあまり見映せぬかはりには、声音こわねいとやさしく、「おん身は仏蘭西フランスえきに功ありしそれがしがうからなりや、」などねもごろにものし玉へば、いづれも嬉しとおもふなるべし。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)