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掻撫
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かいな
見送りもせず、夫人はちょいと根の高い
円髷の
鬢に手を
障って、
金蒔絵の
鼈甲の
櫛を抜くと、
指環の宝玉きらりと動いて、後毛を
掻撫でた。
されど自慢の頬鬢
掻撫づる
隙もなく、青黛の跡絶えず鮮かにして、
萌黄の
狩衣に
摺皮の
藺草履など、よろづ派手やかなる
出立は人目に
夫と
紛うべくもあらず。
我は
顔に
頤を
掻撫づれば、例の
金剛石は
燦然と光れり。
おお、可哀相にさぞ
吃驚したろう、すんでのことで
悪漢が
誘拐そうとした。もう
好いわい、泣くな泣くな。と
背掻撫でて
助れば、得三もほっと
呼吸
手毬を取って、
美女は、
掌の白きが中に、魔界はしかりや、紅梅の大いなる
莟と
掻撫でながら、
袂のさきを
白歯で含むと、ふりが、はらりと
襷にかかる。
いざ、
金銀の
扇、
立つて
舞ふよと
見れば、
圓髷の
婦、なよやかにすらりと
浮きて、
年下の
島田の
鬢のほつれを、
透彫の
櫛に、
掻撫でつ。
心憎し。
鐘の
音の
傳ふらく、
此の
船、
深川の
木場に
歸る。
徐ら、
其の
背を、
姉がするやう
掻撫でながら