打倒ぶったお)” の例文
更に奇怪中の奇怪事は、書斎に打倒ぶったおれていた、血みどろの小川の死体が、ぜ、誰によって、どこへ、運び出されてしまったのか。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
唯今ただいま狂人きちがいが、酒に酔って打倒ぶったおれておりましたのは……はい、あれは嘉吉と申しまして、私等わしら秋谷在の、いけずな野郎でござりましての。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人々は彼女が仰向けに打倒ぶったおれるのを恐れて早速抱きとめたが、彼女は首を縮め、眼玉をかっと剥いて前方を凝視したまま、体はもう硬ばっていた。
見開いた眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
鉢合せをして打倒ぶったおれたまでのことで、道庵が痛い腰をさすって起き直ろうとした時に、先方のさむらいも同じく後ろに打倒れていることを認めました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そしてうちには帰らず、直ぐ田甫たんぼへ出た。止めようと思うても涙が止まらない。口惜くやしいやら情けないやら、前後夢中で川の岸まで走って、川原かわらの草の中に打倒ぶったおれてしまった。
画の悲み (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
忘れもしねえ、暑い土用の最中さなかに、ひもじい腹かかえて、神田から鉄砲洲まで急ぎの客人を載せって、やれやれと思って棍棒を卸すてえとぐらぐらと目がまわって其処へ打倒ぶったおれた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
かくて混血児チャアリイ、メトラス博士の二人は、濡雑巾ぬれぞうきんのように打倒ぶったおされてしまった。
骸骨島の大冒険 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
身体に中ったってよい/\になって打倒ぶったおれて死んだって、何も此の世に思い置く事はない、然うじゃないか、おめえは己が死んだって、一生食うに困るような事はねえから心配しなさんな
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おいら五六人で宿営地へ急ぐ途中、ひど吹雪ふぶく日で眼も口もあかねえ雪ン中に打倒ぶったおれの、半分埋まって、ひきつけていた婦人おんながあったい。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
喧嘩にかけて敏捷ながんりきは、足をすくって組みついていた方の覆面の侍を打倒ぶったおして、今お角を蹴倒して刀を持って逃げようとする侍の行手に立ちはだかる。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と同時に馬がたじたじと後退あとすざりをしたものだから、馬子はアッ! と叫んで打倒ぶったおれた。
乞食 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
胴の間に仰向けで、身うちが冷える。、野宿には心得あり。道中笠を取って下腹へあてがって、案山子かかし打倒ぶったおれた形でいたのが。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
通り抜けられねえから、うろうろしていると役割の死骸……じゃあなかった、役割が打倒ぶったおれてウンウン言っておいでなさるから、こいつは大変だと肩に掛けて引っぱって逃げると
境は、今の騒ぎで、取落した洋傘こうもりの、寂しく打倒ぶったおれた形さえ、まだしも娑婆しゃば朋達ともだちのような頼母たのもしさに、附着くッついて腰を掛けた。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おいら五、六人で宿営地へ急ぐ途中、ひど吹雪ふぶく日で眼も口もあかねへ雪ン中に打倒ぶったおれの、半分まつて、ひきつけてゐた婦人おんながあつたい。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その夜、丑満うしみつの鐘を撞いて、鐘楼しょうろうの高い段から下りると、じじいは、この縁前えんさき打倒ぶったおれた——急病だ。死ぬ苦悩くるしみをしながら、死切れないと云って、もだえる。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
森は押被おっかぶさっておりますし、行燈あんどうはもとよりその立廻りで打倒ぶったおれた。何か私どもは深い狭い谷底に居窘いすくまって、千仞せんじんの崖の上に月が落ちたのをながめるようです。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……血を彩って、日をると、きっとそのものは生命いのちがないというのが知れる……段々嵩じて、行違いなりにも、ハッと気合を入れると、即座に打倒ぶったおれる人さえ出来た。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……打倒ぶったおれました。息もけません。きりきりと腹が疼出いたみだして止りません。友だちが、笑いながら、心配して、冷飯を粥に煮てくれました。けれども、それも、もう通らない。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四方へ引張つたつなが揺れて、鐘と太鼓がしだらでんで一斉いちどきにぐわんぐわらん、どんどと鳴つて、其でいちが栄えた、店なのであるが、一ツ目小僧のつたひ歩行ある波張なみばり切々きれぎれに、藪畳やぶだたみ打倒ぶったお
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……第一背中へつかまられて、一呼吸ひといきでもこたえられるかどうだか、実はそれさえ覚束おぼつかない。悪くすると、そのまま目をまわして打倒ぶったおれようも知れんのさ。ていよく按摩さんに掴み殺されるといった形だ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鐘と太鼓がしだらでんで一斉いちどきにがんがらん、どんどと鳴って、それでいちが栄えた、店なのであるが、一ツ目小僧のつたい歩行ある波張なみばり切々きれぎれに、藪畳やぶだたみ打倒ぶったおれ、かざりの石地蔵は仰向けに反って、視た処
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
呑口のみくちひねる)——親仁、またそこらへ打倒ぶったおれては不可いけないよ。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)