“戒(かい)” の例文
若い盛りの美しいお髪(ぐし)を切って仏の戒(かい)をお受けになる光景は悲しいものであった。残念に思召して六条院は非常にお泣きになった。
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
御出家の方では先(ま)ず飲酒戒(おんしゅかい)と云って酒を戒め、邪淫戒と申して不義の淫事を戒めてあります。つまり守り難いのは此の戒(かい)でございます。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「折角お出で下さいましたおついでに、戒(かい)をお受けしたいのですが、出家の身でなくても、お受けできるものでしょうか」
山の高さも谷の深さも底の知れない一軒家の婦人(おんな)の言葉とは思うたが保つにむずかしい戒(かい)でもなし、私(わし)はただ頷(うなず)くばかり。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「なぜ、妻を持つことが、破戒無道でございましょう、戒(かい)は人間が決めたもの、仏がお決めなされたものではありません」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伏して念(おも)う、某(それがし)、室(しつ)を喪(うしな)って鰥居(かんきょ)し、門に倚(よ)って独り立ち、色に在るの戒(かい)を犯し、多欲の求(きゅう)を動かし、孫生(そんせい)が両頭の蛇を見て決断せるに傚(なら)うこと能(あた)わず
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
いやしくも人々よくこの戒(かい)を守るに至らば、五刑ありといえどもあによく措(お)かざるを得んや。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
聖(せい)マリヤ君にまめなるはした女(め)と壇(だん)に戒(かい)えむ日も夢みにし
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子、増田雅子、与謝野晶子(著)
四戒(かい)ということを言う。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「猪(ちょ)八戒(かい)だよ」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
山(やま)の高(たか)さも谷(たに)の深(ふか)さも底(そこ)の知(し)れない一軒家(けんや)の婦人(をんな)の言葉(ことば)とは思(おも)ふたが、保(たも)つにむづかしい戒(かい)でもなし、私(わし)は唯(たゞ)頷(うなづ)くばかり。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
と、天堂一角、怖ろしく自信をもって、また珍らしくグデングデンに酔って、八戒(かい)のように寝てしまった。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何をいうぞ忘れッぽいという一病があると申すのじゃ。得度(とくど)のさい授けた五つの戒(かい)と、三帰(き)を忘れたの」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余の儀ではございませぬが、上人はもとより、持律戒行(じりつかいぎょう)の清浄身(しょうじょうしん)におわすし、また、八十有余の御弟子(みでし)たちも、みな、おごそかに戒(かい)を守っている浄行の御出家のみと存じますが。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「三帰(き)のうちにも、五戒の中にも、寝ころんじゃいけないという“戒(かい)”はなかったぜ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふたりが痴話(ちわ)に更(ふ)けているまン中の部屋で、ひとり猪(ちょ)八戒(かい)みたいな寝相(ねぞう)をして、朝の鏡に目をこすり「わるい悪戯(いたずら)をしやあがる」と顔の墨汁(すみ)をあらい落して怒らぬところもあった男だ。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから、長老は、彼の青いテラテラな頭上へ手をのせて“戒(かい)”を授けた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
法城の鉄則を破ってまで、あの稚僧(ちそう)に、戒(かい)を授けらるるのか……。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)